なんの前触れもなかった。でも何年も前のことなのに今でも昨日のことのように覚えている。
初めて君を見かけたとき、この子と僕は支え合えると本能的に思った。
　ブランコに座る君の顔は髪の毛のせいでよく見えなかったけど、気がついたら話しかけていて、傘を差し出していた。
「大丈夫？なにしてるの？」
そう話しかけた僕に対して少し驚いてから君は笑い飛ばした。
「あっはは、この街で私に話しかけるとか、君変わってるね。友達にならない？」
「いいよ」
冗談のつもりだったのだろうか、僕があっさり肯定すると言葉を失っていた。
「あ、自己紹介がまだだったね。私、雨露咲楽、今度の4月から雪名高校に通います。君は？」
「僕は天野柚鶴。多分、君と同じ高校に通うよ。」
「そっか、じゃあこれからも一緒にいれるね。よかった。これからよろしく。」
「うん、よろしく。」
　僕と咲楽の不思議な友人関係はそうして始まった。