《それは織田くんのお母さんに。いつも飴を貰ってるから》
「母さん……?あぁ!ありがとう。渡しとくわ。なぁ、さっそくこれ食べでみいひん?」
そう言った織田くんの手にはソース味のキャンディ。
私が頷くと自分の手のひらに3種類の味を並べて、好きなものを選ばせてくれた。
そこから私はお好みソース味、織田くんはとんかつソース味を手に取る。
そして、2人同時に口へと運んだ。
(うん、これは……)
口に含んだ瞬間は『お好み焼きの味だ!』と感じたものの、すぐに口から出したくなる味……。
つまり、一言で言うと……
「まずっ」
私が言葉にするよりも先に、織田くんがそう口にした。
どうやら、とんかつソース味も美味しくはなかったらしい。
《ごめんね。違うのにすれば良かった》
「いや、俺の方こそせっかく買ってきてくれたのに不味いとか言うてごめん。確かに信じられへんような味してるけど、面白いからええやん」
私がマイナスに思うことも、織田くんは笑いながらプラスにしてくれる。
……それにしても、本当に不味い。
私達があまりにも顔をしかめるものだから「先生も一つ貰っていい?」と畑中先生が席を立つ。
織田くんは袋の中からまだ誰も食べていないウスターソース味を先生に渡した。
「ありがとう。いただきます」
そう言って、飴を口にした畑中先生を織田くんと私はじっと見つめる。
すると「意外といけるじゃない」と口にする先生。
その反応にウスターソース味は美味しいんだと思い込んだ私達2人は、揃ってもう一度チャレンジしてみた。
(さっきと同じくらい変な味……)
「いや不味いやん!」
「あら、バレちゃった?」
今度は3人で顔をしかめ、最後に「《これはない》」と言って笑った。