そうこうしていると、1組の教室がある階へと到着した。
廊下ではしゃぐ生徒達は同級生だというのに知らない人ばかり。
そのせいか、まるで先輩の教室の前を通る時のような緊張感がある。
1組と書かれたプレートが近づくにつれ、鼓動がドクンドクンと大きな音をたて始めた。
そして、1組の前へ到着すると里菜ちゃんがポンっと私の背中を叩く。
歩くスピードはさっきよりも明らかに遅い。
廊下にはいないから、教室の中かな?そう思い視線を教室の方へと移すも、目に映るのは知らない人ばかり。
(織田くんいないのかな?他のクラスに遊びに行ってるのかも)
そう諦めかけたとき、教室の前方で楽しそうに笑う織田くんの姿を見つけた。
(いた……!)
隣にいるのはあの日、保健室の窓から声をかけてきたミヤくんと幸太郎くんだろう。
楽しそうに話す輪の中には女の子もいる。
そのうちの一人は「やっぱりバカだね、織田は」と言うと可愛らしい笑顔を浮かべた。
(なんだか遠いな……。いつもはあんなに近くにいるのに)
保健室から一歩出ると、私と織田くんの世界はこうも違うんだ。
そんな現実を突きつけられたようだった。
4限の授業を終えて、いつも通り里菜ちゃんと昼食を食べる。
いつもならすぐにお弁当箱をしまって保健室へと向かうのだが、今日は足が鉛のように重たい。
それはさっき友達と楽しそうに過ごす織田くんの姿を見たから。
(女の子達と楽しそうに話してたな……)
織田くんに友達がたくさんいることなんて、随分と前からわかりきっていたことだ。
それなのに胸がザワザワするのは、この気持ちが恋だと自覚したからだろうか。
(……あ、そろそろ行かなきゃ。織田くんを待たせちゃう)
私は里菜ちゃんに『行ってくるね』と手を振り、保健室へと向かった。