そんなことを言われたのは初めてだ。

会話といっても、私は一回一回流れを止めてしまう。

関西の人は会話のテンポを大切にするんじゃないの?

私と違って織田くんは他にも楽しく話せる相手がいるはず。


《でも、私はすぐに言葉を返せないし、面白いことも言えない》

「狩野ちゃんは俺の話をいつも楽しそうに聞いてくれるやん?俺それが嬉しいねん」

「それにメモに書いてくれる言葉を待つのも楽しみひとつやし。まぁ、面白さは……どうやろな?」

織田くんはそう言うと、おどけて笑ってみせた。




「狩野ちゃんが嫌じゃなかったら、これからも喋りにきていい?」

《もちろん!私も織田くんと話すこの時間が楽しいよ。最近、友達にお弁当食べるの早くなったねって言われるくらい……》

「だから、最近来んの早かったん?そうか、それは知らんかったな」


(あれ、私余計なことまで口走ったかな?)

……でも、まぁいいか。


織田くんが今日一番の笑顔を見せてくれたから。



里菜ちゃんには散々否定をしたけれど、私はこの日、織田くんへの恋心を自覚した。


早く会いたいのも、織田くんが保健室へと足を運ぶ理由が知りたいのも、たった2~3分程度の時間が楽しみで仕方ないのも。


それは全部、

私が織田くんに恋をしているからだ──。