─翌日─
今日も先に保健室へと来ていた織田くん。
「あ、狩野ちゃんおはよー」
《おはよう》
いつもと同じ織田くんなのに、昨日の畑中先生や里菜ちゃんとの会話を思い出すと、なんだか別人のように見えて緊張してしまう。
「あ、俺狩野ちゃんに聞きたいことあんねんけど」
《何?》
私は平静を装いながら、いつものようにメモに返事を書く。
「狩野ちゃんって体育の時、髪2つに結んでる?こうやって」
織田くんはそう言うと両手を握り、耳の横へと持っていく。
《うん、2つにして結んでるよ》
(それが、どうしたんだろう?)
「やっぱり?昨日、グラウンドで走ってたやろ?俺ら写生しに外出てて、戻った時に狩野ちゃんぽい子がおるなと思ってん。後ろ姿やったけど」
保健室以外でも、私のことを気にかけてくれていたんだ。
《よくわかったね?》
「な?すごいやろ。俺、狩野ちゃんやったらどこにおっても見つけられそうな気がする」
その言葉に胸がぎゅっと締め付けられる。
(私の心臓どうしたんだろう?)
《私も織田くんに質問していい?》
「何、何?なんでも聞いて」
織田くんはそう言うと椅子から身を乗り出した。
《織田くんはどうして毎日、保健室に来るの?》
それは、ずっと気になっていたけど聞けなかったこと。
どうして今になってこんなのことを聞いたのか。
この時はよくわからなかったけれど、急に織田くんがここへ来る理由が知りたくなった。
「え、嫌やった?」
《嫌じゃない!》
「良かった。嫌われてんのかと思った」
《ごめんね。突然、変な質問して》
私がそう書くと織田くんは「ええよ。何でも聞いてって言うたん俺やん」と笑う。
「俺が保健室に来る理由かー。そんなん狩野ちゃんと話すために決まってるやん」
《私と話すため?》
「うん、狩野ちゃんと話すんが楽しいからここに来るねん」