未希は早生まれだから歳を取るのが人より遅い。今日は 19歳の誕生日なので、6時からいつものレストランで、高校の卒業と19歳の誕生日と調理師学校の入学を兼ねたお祝いをした。

アルバイトを終えた未希とレストランへ電車で向かう。このごろ、未希は落ち着いて来た。アルバイトをしてある程度の貯金もあるので、お金の心配がなくなっていることもあるのだろうと思う。それに俺が未希の一切の面倒を見ていることが一番なのだろう。

席に着くとすぐに未希は俺にいった。

「こうして高校を卒業して、調理師学校へ入学出来るのも、すべておじさんのお陰です。ありがとうございます」

「俺は未希との約束を守っているだけだ」

「おじさんの身体があんなことになって、約束どおりに身体で返せていません」
未希は声を落として話す。俺も声を落とす。

「いいんだ、それは俺の問題だから、あれからも夜寝る時に返してもらっているから」

「ただ、抱き締めて寝てくれているだけです」

「今の俺にはそれで十分なんだ」

「それでいいのなら私は言うことはありません」

料理が運ばれてくる。

「未希、調理師学校では一生懸命に勉強して力をつけたらいい。社会に出たらそれだけがたよりになる」

「分かっています」

「未希は料理がそれほど得意ではなかったからね」

「お母さんは私に余り家事の手伝いをさせませんでした。私が勉強に集中できるようにと思ってのことだけど、それがお母さんの負担を増やして過労になったのだと思います。もう少しお手伝いしていたらと後悔しています」

「おかあさんは未希に勉強してもらいたかったんだ」

「おかあさんは高校中退だったから就職に苦労したみたいで、私には高校を卒業させたかったようです」

「これでお母さんは安心しているだろう」

「これからは学校から帰ったら私が夕食の準備をしようと思っています」

「確かにそれが学校での復習にもなるし良いことかもしれない。俺にもメリットがある。是非そうしてほしい」

「最初はうまくできないかもしれませんが、いいですか」

「あまり期待しないことにしよう」

「でも頑張りますから、少しは期待してください」

「ごめん、本当は楽しみにしている」

未希は4月に調理師専門が通い始めたら、夕食を作ってくれると言う。未希の決心は確かのようだ。高校生の時とは別の生活が楽しみでもある。