新婚旅行は連休明けに思い出の伊豆下田の高級なホテルに2泊3日で行った。

久恵ちゃんにせっかくだからハワイにでも行こうかと提案したけど、思い出の下田へもう一度行きたいというのでそうした。僕もあの時の思いをもう一度記憶に刻み込んでおきたかったので賛成した。

部屋は3階のオーシャンビューで晴れた5月の海は遠くまで見えた。部屋には温泉かけ流しの大きなお風呂がついている。お風呂からも海が見える。

ここへチェックインするとすぐに二人で水族館へ行ってきた。一人で見ていたというアシカショーも見てきた。二人で見た方がやっぱり楽しいと言っていた。確かに楽しいことは二人だと何倍も楽しく思える。ここでは久しぶりにゆっくりとした時間が流れている。

ホテルに戻って、せっかくだから温泉につかろうと部屋についている大きなお風呂に入ることにした。久恵ちゃんとはこれまで一緒にお風呂に入ったことがなかった。

僕はすぐにでも一緒に入りたかった。でもあの日からすぐに生理になったり、うまくできない日が続いたりで、久恵ちゃんがナーバスになっていたし、へんなところで急にはにかんだりもしていた。それに仕事で疲れているだろうから、好きなお風呂ぐらいゆっくり一人で入りたいのだろうと思っていた。

「大きなお風呂だから、一緒に入らないか? 僕が洗ってあげる」

「はい」というのに少し間があった。

「先に入っていてください」

「じゃあ」と言って僕が先に入った。温泉はやっぱいい。疲れがとれる気がする。昼間からのお風呂は気持ちがいい。

久恵ちゃんがなかなか入ってこない。どうしたんだろうと思っていたら、恥かしそうに入ってきた。いつもとは違って見える可愛い裸身だ。

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか」

「そんなにじっと見ないで下さい。恥ずかしいです」

「もっと恥ずかしいことをいっぱいしているのに」

「それとはまた違います」

そう言って、僕が浸かっているそばに入ってきて浸かった。そうなの? 

「久恵ちゃんの裸を初めて見た時のことを思い出した。驚いてバスタブから抱き上げて部屋まで運んだけど、あの裸身がいつまでも目に焼き付いて離れなかった」

「あの時、動転して見るゆとりなんかなかったと言っていたけど、やっぱりしっかり見ていたのね。今思い出しても恥ずかしい」

「今となっては楽しい思い出だ。あの時よりずっと色っぽくなったね」

「ここのところ優しく可愛がってもらっているからだと思います」

「じゃあ、洗ってあげようか?」

久恵ちゃんを座らせてタオルに石鹸を付け背中から洗ってやる。背中、首元、わきの下、腕、脇腹、お尻と洗ってゆく。

「くすぐったいけど、とっても気持ちいい」

「そう、洗ってもらうと、気持ちがいいんだ。分かった? 立って、向きを変えて」

「恥ずかしい」

「じゃあ、目をつむっていて」

久恵ちゃんは素直に目をつむった。胸、小ぶりな可愛いお乳、お腹、大事なところ、脚と洗っていく。

「そういえば、久恵ちゃんが指を怪我した時、よく目をつむらせられたね」

「パパのことだから、こちらを向いているときはしっかりつむっていたけど、後ろに回ったときはしっかり見ていたんでしょ」

「そのとおり、しっかり目の保養をさせてもらった。お尻が可愛かった」

「パパは段々変態になってきたみたい」

「久恵ちゃんが思わせぶりな態度をとるからだ」

「まあ、作戦どおりだったけど」

「そうなの?」

「今度は私が洗ってあげる。座って、背中から洗うから」

「こうしてパパの背中を洗ってみたかった」

「そうなの? 早く言ってよ」

「ママが崇夫パパと時々一緒にお風呂に入っていたの。週末にパパがいつものように先に入って、そのあとママがすぐに入って、パパを洗ってあげて、パパが上がった後に、私が入るとママが私も洗ってくれた」

「そうなんだ」

「私も一緒に入りたいと言ったら、二人からだめと言われた」

「もう中学生になっていたんだろう。それじゃ、兄貴が遠慮するよ」

「私はパパが好きだったから,全然平気だけど」

「だからなおさらママが気にしたんだ、きっと」

「そうなの、お風呂が狭いからかなと思ったけど」

「洗ってもらうと気持ちがいい。久恵ちゃんは洗うの上手だね。最高」

「パパ、若いころソープランドに行っていたと言ってたけど、こうして洗ってもらったの?」

「ああ」

「私とどちらが上手?」

「そりゃあ、久恵ちゃんに決まっている」

「本当?」

「本当に本当!」

「最近は行っていないでしょうね」

「行っていない。誓って」

「絶対にだめ、とはいってもでき心で行かないとも限らないから、これからは週末に一緒に入って洗ってあげます」

「ぜひお願いします」

どうした風の吹き回しか、週末の楽しみができた。こちらから提案しようと思っていたけど、同じことを考えていた。

「じゃあ、上がろうか?」

「私はもう少し入っています。ここのお風呂は最高、温泉だし海も見えるし」

僕は先に上がって浴衣を着た。久恵ちゃんはまだ入っていると言う。お風呂が好きな彼女らしい。昼間から眠って溺れることもないだろう。安心して待っていられる。

ソファーに座って缶ビールを飲む。冷たくて旨い! これで久恵ちゃんの膝枕でもあればもっと最高!

そこへ浴衣姿の久恵ちゃんが上がってきた。やっぱり浴衣がよく似合う。この前よりもずっと色っぽく見える。冷蔵庫からジュースのボトルを取り出して僕の隣に座った。

僕の顔を見てニコっとしたと思ったら、僕の膝を枕に寝転んだ。

「これを一度したいと思っていたの、丁度いい感じ」

「それは僕の方の楽しみなのに」

「しばらくいいでしょう、お願い」

しばらく横になって静かにしていたが、起き上がった。

「パパの膝枕、硬くて、首が痛くなった」

「昔から膝枕は柔らかい女性の膝と相場が決まっている。男の膝枕なんて聞いたことがない」

「やっぱり、そうか。でもしてみたかったの」

「久恵ちゃんは典型的なファザコンだね。すぐにそういうことをしたがる。お腹の上で寝てみたいと言ったりして」

「私は母子家庭で育って、本当の父親の顔も知らなかったし、幼いころの父親の思い出もありません」

「だから、兄貴を好きになってくれたんだね。それから僕も」

「崇夫パパは本当に私の父親になってくれた。大人になる7年位の大事な時期に父親になって私を守ってくれた。学校で同級生にからかわれたと言うと、すぐに学校へ文句を言いに行ってくれた。今でも感謝しています。また、血がつながっていなかったので、男性としても見ることができたように思います。だからパパのように歳が離れていると守られていると思えて安心できるの」

「僕はロリコンかもしれない。若い時に女性と意思疎通がうまくできなくて、同年代の女性とは距離を置くようになった。そのうち誘われてソープランドなどへ通ううちに、年齢の離れた女性としか付き合えなくなったみたい。歳が離れているとゆとりがあるというか、安心だからかもしれない」

「パパは十分に同年代の女性ともうまくやっていけると思うわ」

「今は、いろいろ社会的な経験も積んでいるから、なんとかなると思うけど。でも、恋愛は別だと思う。うまくできる自信がなかった」

「自信もってもらっても困る。もう私がいるんだから」

「ごめん。浮気しようなんて少しも思っていないから」

「男は恋愛を振り返る時はいつもほろ苦い青春時代を思い出して反省する。だから、幾つになっても対象は青春時代の年齢の娘になってしまうのかもしれないね」

「男の人ってもともとロリコンなのかな?」

「もう一つ、男は女性を自分の好みにしたいとの思いが強いのではないかな。若い娘ならそれができる。パパも久恵ちゃんを好みの女性に仕立てたい」

「もう相当に仕立てられていると思います。言うことは何でもよく聞いているつもりですから」

「男って言うとおり本来ロリコンなのかもしれない。大体、昔から愛人は若い娘に決まっている。体力に自信があれば、やはり若い娘がいい」

「パパ、身体を鍛えてね。頼りにしてますから」

「僕たちは『ロリコン』と『ファザコン』できっと最高のめぐり合わせに違いない。めでたし。めでたし」


こうして、会社への届では「姪」、マンションの管理人さんには「妻」、家の中では父親代わりの「パパ」のはざまで同居生活することは終了した。会社には「妻」とした。会社の周りの人たちからはしばらくは若い奥さんをもらったやっかみもあるのかさんざんからかわれた。

ただし、家では「パパ」のままとなった。入籍後、しばらくは「康輔さん」とか「あなた」とか呼んでみていたけど「やっぱパパが言いやすい、結婚しても父親代わりには変わりないでしょ」と呼び方が「パパ」に戻った。

もし、子供が生まれたら、本当の「パパ」になるので、これからずっと「パパ」でいい。おしまい。