それは空に満天の星たちが輝いている、そんな夜のことだった。
「あぁ、綺麗な星空だなぁ」
れもんじゃは一人、夜空を見上げた。
その瞬間、流星群が、れもんじゃの視界を横切った。
あっ、流れ星だ!綺麗だなぁ。
れもんじゃは見入っていた。
そうだ、流れ星が流れ切る前に、願い事を三回唱えると願いが叶うと聞いたことがある。れもんじゃは必死に願い事を唱えた。
「忍者になれますように。忍者に……あっ!」
流れ星は地平線の彼方に消えていった。
「あーあ」三回唱えられなかったなぁ。
れもんじゃは落胆した。その刹那、一つの流れ星が、れもんじゃの近くに落ちてきた。
「忍者……」あー、無理か。
あんなに速くては三回も唱えられない。……それにしても、近くに落ちたな。
れもんじゃは落ちたところに行ってみた。すると、そこには得体の知れないものが落下していた。
「あー、痛てて」
「大丈夫?」れもんじゃは聞いた。
「あー、大丈夫、大丈夫。それよりも、ここ、どこ?」
「えっ!?地球だよ」
「マジか!?」
「地球人じゃないの?」明らかに容姿が違うので、そう聞いた。
「違うわ!見たらわかるだろ!星だろ、星。お星様だろ!」
「えっ!?星?じゃあ、さっきの流れ星?」
こいつが流れ星?……もしかして、これはチャンスなのか?こいつが流れ星なら願い事叶え放題なんじゃないか、という甘い期待が湧いてきた。
「そう。流れ星。最悪やぁ。みんなとはぐれてしまったわ」
「さっきの流星群?あそこにいてたの?」
「そうや。最悪やぁ。急いで追いかけな」
「そうなんだ」
「じゃあな。急いで追いかけるわ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」れもんじゃは必死に引き止めた。
「なんでよ!急ぐんだけど……」
「願い事あるんだけど……」
「だから?」
「流れ星さんの力で叶えてよ」
「えー、今?急いでるって言ってんだけど」
「ちょっとだけ。願いだけ叶えてくれたら、行ってもいいから」
「えー、めんどくさいんだけど」
「そう言わずに、お願い。お願いします」
「んー、わかった。これも何かの縁やし、そこまで言うなら、叶えたるわ」
「ホンマに!?やった!ありがとう」
「それじゃあ、この木とあの木の間を通るからその間に三回、願い事を言ってな」
「うん、わかった」
「じゃあ、行くでー」
ヒュン!
「……」あまりの速さに、れもんじゃは一言も発することができなかった。
「何してんだよ!願い事、言わないと……」
「いや、だって速すぎるよ。あんなに速いの無理だよ」
「何言ってんだよ!お星様やぞ!高速舐めんなよ!」
「もうちょっとゆっくりにしてよ」
「もう……しゃあないなぁ。じゃあ、ゆっくり行くで」
「うん」
ヒューン!ヒュン!
「忍者になれま……」
それでも、あまりの速さに三回言うどころか一回もまともに言えなかった。
「いやいやいやいや。今のはかなり遅かっただろ。はよ言えよ!」
「無理だよ。十分、速すぎるよ」
「はぁ、あれくらいで速いって言ってたらどうすんだよ。亀と大差ないだろ」
「もうちょっと、ゆっくり。ね、お願い」
「もう、仕方ないなぁ。ちゃんと早口で言うんやで」
「うん。わかった」
「じゃあ、行くで」
ヒューーン!ヒューン!
「忍者になれますように。忍者になれますよう……」
今回は『早口で言う』という奥義を使ったから結構、言うことができたが、それでも三回は唱えることができなかった。
「なんで三回、言わないんだよ!三回言わな願いを叶えられないだろ!」
「いや、だって速いよー。あれでも究極マル秘奥義を使って言ったんだよ」
「そんな訳のわからない奥義を使おうが、言えなかったら一緒なんだよ!そもそも、そんなに忍者になりたいのか?」
「そりゃ、なりたいよう。忍者は僕の夢だから。忍者はヒーローの中のヒーローなんだよ」
「そんなに憧れてるのなら、しっかりと三回唱えろよ!」
「でも、速くて、言えないよー。別にもう僕の願い事が何かがわかってるんだから三回唱えなくても叶えてくれたっていいじゃないか」
「ア、ア、アホか!流れ星には願い事を三回唱えて始めて願いを叶えてもらえるものだろ!しかも、たとえ三回唱えても、願い事が百%叶えてもらえるってもんでもないんだぞ!願い事を叶えてもらえないときだってある。でもな、それはそれで仕方がないことなんだぞ。誰のせいでもない。誰かのせいにしなければいけないのであれば、それは流れ星に願いを叶えてもらおうとして、自分で努力をしなかった、その人自身のせいだろ!」
「じゃあ、願いは叶えてくれないの?」
「叶えるよ!叶えるんだけどな、ちょっとは自分で頑張ってみろよってことが言いたかっただけ。わかるか?願いを叶えるのはそんなに簡単なことじゃないんだよ!」
「ごたくはいいから、結局、叶えてくれるの?くれないの?」
「だから、叶えたるよ!あー、わかった。次、最後な。次、三回、絶対言えよ!言えなかったら、もう知らんからな!」
「ラストか……。うん、頑張る。ゆっくりね。ゆっくり」
「よし、わかった。行くぞ」
ヒューーーン!ヒューーン!
「忍者になれますように。忍者になれますように。忍者になれますよ……」
言えた!のか?最後、かなりきわどいように思えるが、れもんじゃは言えたということで押し切ることにした。
「言えた!言えたよ!今、完全に三回唱えることができたー!!やったー!!言えたよー!!」
「いや、最後、言えてなかっただろ。惜しかったな。でも、言い切れなければ願い事をかなえてあげられないから」
「えっ!?何、言ってるの?言えたよ。言えたじゃないか」
「いや、言えてないよ。お前は何も成し得なかったんだよ。残念だけどここまでだな」
「ちょっと待ってよ。言えたよ。本当に言えたんだよ」
「俺が言えてないっていったら、それは言えてないの!!」
「……」
あまりの迫力に、れもんじゃは黙ってしまった。
「じゃあ、先、急ぐから」
ヒュン!!
流れ星は高速で夜空へと消えていった。
「えー。言えたよー」
れもんじゃは一人取り残されながら、ポツリとつぶやいた。
「あぁ、綺麗な星空だなぁ」
れもんじゃは一人、夜空を見上げた。
その瞬間、流星群が、れもんじゃの視界を横切った。
あっ、流れ星だ!綺麗だなぁ。
れもんじゃは見入っていた。
そうだ、流れ星が流れ切る前に、願い事を三回唱えると願いが叶うと聞いたことがある。れもんじゃは必死に願い事を唱えた。
「忍者になれますように。忍者に……あっ!」
流れ星は地平線の彼方に消えていった。
「あーあ」三回唱えられなかったなぁ。
れもんじゃは落胆した。その刹那、一つの流れ星が、れもんじゃの近くに落ちてきた。
「忍者……」あー、無理か。
あんなに速くては三回も唱えられない。……それにしても、近くに落ちたな。
れもんじゃは落ちたところに行ってみた。すると、そこには得体の知れないものが落下していた。
「あー、痛てて」
「大丈夫?」れもんじゃは聞いた。
「あー、大丈夫、大丈夫。それよりも、ここ、どこ?」
「えっ!?地球だよ」
「マジか!?」
「地球人じゃないの?」明らかに容姿が違うので、そう聞いた。
「違うわ!見たらわかるだろ!星だろ、星。お星様だろ!」
「えっ!?星?じゃあ、さっきの流れ星?」
こいつが流れ星?……もしかして、これはチャンスなのか?こいつが流れ星なら願い事叶え放題なんじゃないか、という甘い期待が湧いてきた。
「そう。流れ星。最悪やぁ。みんなとはぐれてしまったわ」
「さっきの流星群?あそこにいてたの?」
「そうや。最悪やぁ。急いで追いかけな」
「そうなんだ」
「じゃあな。急いで追いかけるわ」
「ちょ、ちょっと待ってよ」れもんじゃは必死に引き止めた。
「なんでよ!急ぐんだけど……」
「願い事あるんだけど……」
「だから?」
「流れ星さんの力で叶えてよ」
「えー、今?急いでるって言ってんだけど」
「ちょっとだけ。願いだけ叶えてくれたら、行ってもいいから」
「えー、めんどくさいんだけど」
「そう言わずに、お願い。お願いします」
「んー、わかった。これも何かの縁やし、そこまで言うなら、叶えたるわ」
「ホンマに!?やった!ありがとう」
「それじゃあ、この木とあの木の間を通るからその間に三回、願い事を言ってな」
「うん、わかった」
「じゃあ、行くでー」
ヒュン!
「……」あまりの速さに、れもんじゃは一言も発することができなかった。
「何してんだよ!願い事、言わないと……」
「いや、だって速すぎるよ。あんなに速いの無理だよ」
「何言ってんだよ!お星様やぞ!高速舐めんなよ!」
「もうちょっとゆっくりにしてよ」
「もう……しゃあないなぁ。じゃあ、ゆっくり行くで」
「うん」
ヒューン!ヒュン!
「忍者になれま……」
それでも、あまりの速さに三回言うどころか一回もまともに言えなかった。
「いやいやいやいや。今のはかなり遅かっただろ。はよ言えよ!」
「無理だよ。十分、速すぎるよ」
「はぁ、あれくらいで速いって言ってたらどうすんだよ。亀と大差ないだろ」
「もうちょっと、ゆっくり。ね、お願い」
「もう、仕方ないなぁ。ちゃんと早口で言うんやで」
「うん。わかった」
「じゃあ、行くで」
ヒューーン!ヒューン!
「忍者になれますように。忍者になれますよう……」
今回は『早口で言う』という奥義を使ったから結構、言うことができたが、それでも三回は唱えることができなかった。
「なんで三回、言わないんだよ!三回言わな願いを叶えられないだろ!」
「いや、だって速いよー。あれでも究極マル秘奥義を使って言ったんだよ」
「そんな訳のわからない奥義を使おうが、言えなかったら一緒なんだよ!そもそも、そんなに忍者になりたいのか?」
「そりゃ、なりたいよう。忍者は僕の夢だから。忍者はヒーローの中のヒーローなんだよ」
「そんなに憧れてるのなら、しっかりと三回唱えろよ!」
「でも、速くて、言えないよー。別にもう僕の願い事が何かがわかってるんだから三回唱えなくても叶えてくれたっていいじゃないか」
「ア、ア、アホか!流れ星には願い事を三回唱えて始めて願いを叶えてもらえるものだろ!しかも、たとえ三回唱えても、願い事が百%叶えてもらえるってもんでもないんだぞ!願い事を叶えてもらえないときだってある。でもな、それはそれで仕方がないことなんだぞ。誰のせいでもない。誰かのせいにしなければいけないのであれば、それは流れ星に願いを叶えてもらおうとして、自分で努力をしなかった、その人自身のせいだろ!」
「じゃあ、願いは叶えてくれないの?」
「叶えるよ!叶えるんだけどな、ちょっとは自分で頑張ってみろよってことが言いたかっただけ。わかるか?願いを叶えるのはそんなに簡単なことじゃないんだよ!」
「ごたくはいいから、結局、叶えてくれるの?くれないの?」
「だから、叶えたるよ!あー、わかった。次、最後な。次、三回、絶対言えよ!言えなかったら、もう知らんからな!」
「ラストか……。うん、頑張る。ゆっくりね。ゆっくり」
「よし、わかった。行くぞ」
ヒューーーン!ヒューーン!
「忍者になれますように。忍者になれますように。忍者になれますよ……」
言えた!のか?最後、かなりきわどいように思えるが、れもんじゃは言えたということで押し切ることにした。
「言えた!言えたよ!今、完全に三回唱えることができたー!!やったー!!言えたよー!!」
「いや、最後、言えてなかっただろ。惜しかったな。でも、言い切れなければ願い事をかなえてあげられないから」
「えっ!?何、言ってるの?言えたよ。言えたじゃないか」
「いや、言えてないよ。お前は何も成し得なかったんだよ。残念だけどここまでだな」
「ちょっと待ってよ。言えたよ。本当に言えたんだよ」
「俺が言えてないっていったら、それは言えてないの!!」
「……」
あまりの迫力に、れもんじゃは黙ってしまった。
「じゃあ、先、急ぐから」
ヒュン!!
流れ星は高速で夜空へと消えていった。
「えー。言えたよー」
れもんじゃは一人取り残されながら、ポツリとつぶやいた。