「吉田局長に怒られちゃいました。『お前はいつも乾電池ばっかり喰っている』って。だから、お小遣い貰ったんです。こーんなに♪」
「お前、パパ活はいいが仕事は見つかったのか?」
美佐子が言った。
美佐子には美佐子の生き方があるし、俺は俺の生きたいように生きるしかないのだ。そして俺は、自分がどう生きるかについて責任を負いたくないから、美佐子を問い詰める資格などなかった。俺はただ黙っていた。
美佐子は言った。
「私も……」
「えっ?何だって?」
「何でもないよ」
そう言いながら、美佐子は寂しげな笑顔で微笑んだ。
「声優カメラマン、ミャンマーで餅を詰まらせて死亡」


"出掛けなければよかった "と思う。でも、行かざるを得なかった。怖かったんです。あんなに怖い思いをしたのは初めてでした。あの病院から出ることができなかったんです」と彼は言う。

"外に出てみると、餅がまだそこにあるのが見えました。私は自分に言い聞かせました。『その餅で喉を詰まらせることはない』と。何も食べなかったよ。"

彼は病院に運ばれ、5、6日過ごした。

家族には、「チャンスはある」と言われた。

そして、彼はチャンスを得た。

"病院には娘と息子も一緒にいました。私は彼らに、また両親に会えるんだよと言いました。娘たちは「お父さん、怖がらないで。心配しないで "と言っていました。

彼の家族は、彼が医師の診察を受けることを告げられたという。

"心臓が止まってしまって、もうどうしようもないと言われました。"

彼は病院から家に帰されました。

"大変だ、どうしよう "と言ったんです。

その時、彼は希望と恐怖のサイクルに巻き込まれたのです。

希望は娘と息子だった。

"私は祈りました。神は私にこう言うだろう

Output text:
と "

彼と娘たちは、彼について行った。

"これでいいのだ、これでいいのだ、私のことを必要としている。私と会ってくれてもいいのだ。ただし、病気は必ず治しておくのだ。だから、娘たちが帰ってくる前に、私と会っておいた方がいい。本当に必要と思えばね。私を信用してほしい。娘たちが帰ってきたら、『お父さん、すごいですね、ありがとう、ありがとうなんです』とお礼を言うのだ。娘たちは本当に本当に私の味方なのだからな。

私は病院に行って、『もう大丈夫だから』と言いました。それで帰ってきたのです。

そして、娘たちに『よかった』と言われて、うれしかった。

私、もう、大丈夫です!』

娘たちは母親に喜ばれ、母親も『本当に良かった。あの子は本当に頼りになるよ。私にとっても良い父親だね。本当にありがとう』と語った。

父親は、自分の孫にも、母親に喜ばれて『ありがとう。よかった』と言われていた。

これが、彼の最後の人生になった。

彼は、50歳で亡くなった。




チャンネル登録よろしくお願いいたします!

『息子は、『もう少し怖がらせずに、家族に真実を話して欲しい』と話していました。

息子は、『母さん、ごめん!ごめん!父さんがいけないんだ。

母さん、本当に謝るよ!ごめんなさい。父さん、ホントごめんなさい。

母さん、もう、ごめ〜ん』って謝ってる。

お前と話していたら、父さんは、父さんは、父さんは、父さんの人生は父さんが良いんだ。父さんは父さんとして生きてくれた。父さんに何かあったら、母さんに言われていないことに、父さんの生き方は責任を持ってやりたいんだ。それが今の父さんの言葉だ。

何があっても守り抜ける人ではないと考えるのは、父の心だと思う。母さん、お母さんごめんなさい。母さんが子供を産んで、母さんを守れないのが嫌だよ。母さんのための言葉だって思ってるなんて思いたくない。

それでも何があっても、母さんの息子さんだからあると信じて、守って欲しい。

本当にごめんなさい。母さんはこの先も守る人でいて欲しい。ごめんなさい。」

この投稿を見た私は、息子がおかしなことを言っていると思った。

確かに、これは夫婦生活において、一番の問題だと思う。

しかし、息子が、『ごめんなさい。ごめんなさい』と言っているのだ。どんなに言葉を重ねても、心がなかなか伝わっていないようだ。

こういうことを息子が言うということは、夫や妻に対して何らかの対応で謝罪をしている可能性が高い。



私も母親であるが故に、息子の言動に対して何らかの謝罪をするだろう。しかし、私は息子を親だと思っていない。

夫が、もしもしお嬢さん?と聞いて、息子は『あ~、ごめん、ごめん!何だっけ?何で俺に電話したの?』と答えた。

お嬢さんは、『母さんの話を聞いて、何で僕に電話をしてくれたのかと思ったよ。母さんが子供に話を聞いて欲しいって言ってるのに電話をして、何だっけ?って、母さんを心配してたから。ごめんなさ~い~!』と息子に電話しながら謝った。

これはいくらかの怒りを感じるが、息子が、『悪かったよ。ごめんな』と言うというのは、それなりに面白いこともあるのかもしれない。

ところで、私は、娘が泣き始めたとき『大丈夫?何かあった?』と聞いた。

娘は、『あ~、もう、もう、どうしたの!ママが『もう少し怖がらず、待って』って言うところ、待ってってば!もう、待たないってば!』と怒りはじめたという。

また、私の場合は、『どうしたんだ?何があったのか分からないよ!ママも、パパも、どうしたらいいのか分からなくて、困っているんだよ!』と言った。
すると娘は、少し落ち着いてきて、「うん、分かった。ちょっと落ち着くわ。ごめんね。」と言ってきたという。
私は、娘が何を待っているか分かるような気がする。
それは、私が、自分がまだ母親であることを受け入れることだと思っている。
しかし、今の自分に自信がないのである。
そして、娘が、そんな私に、早く母親になってほしいと思っていることを知っている。
私自身も、母親として生きることに執着している部分がある。
つまり、私は自分というものがあって、それを手放したくないと考えているということである。
だから、私には、本当の意味での母親になることはできないと思う。
でも、そういう私であっても、母親になれることは間違いないと思えるようになってきた。
私の娘は、私よりも賢いです。

そんな動画がユーチューブで大炎上した。


私の姪っ子は天才児です。
彼女の動画は再生数2千万回を超えています。
こんな投稿がありました。
チャンネル登録よろしくお願いいたします! 娘のチャンネル登録者数が5万人になったそうだ。
5万人と言えばすごい数字だが、実は彼女はまだ小学生だ。
小学校6年生だ。
チャンネル登録者の中には中学生もいるらしい。
彼女のYouTubeチャンネルは、主に教育系チャンネルになっている。
例えば、漢字検定1級に合格する方法や算数の問題を解いている様子などを投稿している。
その問題を解くために、彼女が使っている教材は、有名な進研ゼミの問題集だ。
私は、塾に通ったことがないが、娘は塾に通っていたことがある。
そこで、数学の才能を見出されたようだ。
今では、数学オリンピックにも出場している。
私は、この問題集を買ったことはない。
この手の本は高いからだ。
それに、私にとっては簡単な問題が解けるようになると嬉しいとは思わない。
それよりも、自分で考えて答えを出した方が楽しいからだ。
しかし、彼女くらいになると違うようである。
「お母さん、私、学校の勉強でわからないところを先生に聞くのが嫌いなんだ。それで、自分で調べて解くほうが楽しかったんだ。
だけど、今は学校の宿
「声優カメラマンはミャンマーへ何をしに行ったんだ?」僕は思わずそうつぶやく。
今年の4月、ミャンマーに渡航していた声優・中村悠一氏が自身のTwitterアカウントにて、「これからは声優もグローバルな時代」という趣旨の発言をして、話題になっていた。
そして、彼はその後、東南アジアの国々を回る旅行企画を行っていたのだが……
『旅程表』と題されたツイートによると、彼が向かった先はタイやカンボジアではなく、まさかのミャンマーだったのだ。
しかも、日程を見ると、彼の滞在期間は約3週間で、日本を出発してから帰国するまでほぼ丸々半年以上を費やしていた。
一体なぜそのようなことになったのか? それについて、本人が語っている記事を見つけたので、引用させて頂こう。
(以下、原文のまま)
―――
【インタビュー】『声優カメラマン』として世界を巡る! https://www.anim
「君はその取材のコーディネートをしたり資料作りをして中村本人の行動に直接タッチしてないというんだな?なら、なんで病院に餅があった? ミャンマーでの行動先に餅があるなんて不自然じゃないか。しかも死因は餅による窒息死。被害者に一番近しいのは君なんだよ」
任意取調べで刑事が声を荒げた。
私が、中村氏と一緒に仕事を始めたのも、コーディネーター役を買って出たのも事実だ。
しかし、直接彼に接触したのはほんの数回。
そもそも私は事件と無関係なのに……
「餅に毒が入っていたのか? だとしたら、誰の仕業なのか? それが知りたいんですよ。犯人がわかれば動機だってわかるかもしれないじゃないですか。
あなた方警察は、事故と断定したけど、俺は納得できない。
だからこうしてお話を聞いているんです」
医師が静かに言った。
「まず、ご遺体の状況を確認しましょうか?それからでも遅くはないでしょう? あなたの話は後回しにしてもいい。
我々も無駄足は踏みたくないのですから」

***
私は、事件の日のことを思い返した。
その日の午前中、中村氏は事務所にやってきた。
いつものように笑顔で挨拶を交わしたあと、彼はカバンの中からファイルを取り出して私に差し出した。
中には手書きの資料が入っているという。
それを受け取って目を通すと、それは私が以前頼んだミャンマーでのスケジュールだった。
彼は、自分の予定も書き込んだ上で、現地の情報なども詳しく書いてくれている。
私は礼を述べながら、感心する。
さすが、あの若さで売れっ子の声優さんはマメだ。
ただでさえ忙しいはずなのに、私の希望をよく聞き入れてくれたものだ。
「ありがとうございます。これで何とかなりそうです」
私が頭を下げると、彼は「いえいえ、こちらこそご無理言ってすみません」と言った。
そして、「じゃあ、早速今日から行ってきてください!」と満面の笑みを浮かべる。
私は苦笑いしながら言う。「えぇ!? ちょっと待って下さい! いくらなんでもいきなり過ぎますよ! せめて一週間くらいは下準備させてください。でないと私一人ではとても……」
すると彼は、不思議そうな顔で言う。
「あれ?違いましたっけ? 僕たち二人で行くんでしたよね?」
一瞬、言葉の意味がわからなかった。
そんなことを打ち合わせをしただろうか?私は慌てて記憶を辿る。
確かに、前に一度、彼と二人だけで旅行に出たことがあった。
その時は、確か、雑誌の取材名目で…… そうだ!思い出してきたぞ! だが、私はそのことを忘れていたわけではない。
事前にきちんと確認を取っていたはずだし、何より彼から直接そう言われたのだ。
「もちろん覚えています。ただ、その件は私の方で手配を済ませてしまいまして。後は、現地での段取りを決めるだけなんです。
なので、もしよろしければ、現地に一緒に行っていただけると助かるのですが」
私はそう説明したが、それでも彼は首を縦に振らなかった。
「いやぁ、いいですよぉ。そういうのは、こっちでやっておきますので。それより、早く行ってきちゃった方がいいと思います。
ほら、時間が経つほど、言い出しにくくなるっていうし」
そう言われてしまえば、こちらは引き下がるしかない。
「わかりました。では、よろしくお願いしますね」
彼は嬉しそうにうなずいた。
「はい。任せておいてください。その代わり、絶対に良い写真撮ってきてくださいね。楽しみにしてますので」
――
「つまり、あんたがコーディネーターとして同行している最中、中村氏の方は一人勝手にどこかへ消えてしまったわけだ。
しかも、彼が失踪していた間、ずっと行動を共にしていたはずの君が、なぜか餅の存在を忘れていた。
まるで、中村氏がいなくなったことに気づいてすらいなかったみたいじゃないか。
これは一体どういうことだ? 君は本当に事件に関与していないのか? そもそも、なぜ中村氏は一人で消えたんだ? 誰かと待ち合わせをしていたとか? それとも……」
刑事が言葉を切って私を見つめる。
「まさかとは思うが、実は君が彼を殺してしまったんじゃないだろうな? だとすれば、当然共犯者がいるだろう」

***
私は、今年1月のある日のことを思い出しながら、刑事に答えた。
「中村氏と約束して、彼の行きつけの喫茶店で落ち合うことにしたんです。
時間ちょうどに店に入ったところ、すでに中村氏の姿がありました。
彼はコーヒーを飲みながら、何か考え事をしているようでした。
声をかけようと思ったところで、先に向こうが気づいて、手を振りました。
『どうも、お待たせしました』と言って席に着くと、『いや、俺が少し早かっただけだから気にしないでくれ。むしろ急がせたんじゃないか?』と申し訳なさそうにしていました。
そこで改めてお詫びをしたところ、彼は笑って許してくれました。
その後、二人で今回の取材について話をしていたところ、店のドアが開き、一人の男が入ってきました。
背が高く、細身で眼鏡をかけた男でした。年齢は30代後半くらいでしょうか? 中肉中背という表現が一番似合いそうな感じでした。
男は私と目が合った途端、驚いたように立ち止まり、私たちの方を見て固まっている様子でした。
しかし、すぐにハッとしたような顔をすると、慌てたようにこちらに向かってくると、いきなり頭を下げて謝罪の言葉を口にし始めたのです」
***
「それがこの男か?」
私はうなずく。
「はい。彼は、自分がここに来る前に、偶然にも別の客からトラブルの相談を受けていたと話してくれました。
何でも、若い女性が男性店員を怒鳴りつけて、代金を踏み倒そうとしたらしいのです。
それで、その女性は逃げていったそうです。
ところが、逃げた先で彼女は転び、怪我を負ってしまった。
そこに通りかかったのが、先程の男だったそうです。
男性は、女性を抱え起こすと、持っていたハンカチで彼女の血止めをしてあげたそうです。
そして、自分の名刺を渡すと、そのまま去っていったとのことでした」
「ふむ。確かにそんな話なら、君の耳に入っていてもおかしくはないな。
それにしても、こんなどこにでもいそうな平凡な男のどこに惹かれたというのだ?」
「私はただ単に、彼に好意を抱いただけです。それ以上の理由はありません」
「ふん。まぁいい。続けろ」
「はい。続きを話します。私は、その時はなんとも思いませんでしたが、後になって、あの女性が中村氏の担当しているアニメのヒロインだったことに気がつきました。
彼女が助けられたというその事実を知ってからというもの、私はますます彼を意識するようになりました。
だから、今回の旅行を彼と二人きりで過ごすチャンスだと思って、強引に計画を進めたんです。
もちろん、仕事のためというのは本当です。
ただ、それと同時に、私の個人的な感情もあったことは否定できません。
つまり、私はただの卑怯者で、臆病者なんです。
中村さんは、そんな私を受け入れてくれたばかりか、こうして優しく励ましてくれるんです。
とても感謝していますし、尊敬もしてます。
なのに、それを裏切るような形で、自分だけ幸せになろうとしているんです」
「……」「なるほどな。それは確かに、立派な裏切り行為と言えなくもないな」
「はい。わかっています。本当にすみませんでした」
私が頭を下げると、刑事は苦笑する。
「いや、別に謝れと言っているわけじゃない。そもそも、君には中村氏の失踪に心当たりがないんだろう? それならば、彼がいなくなったこと自体、君の責任ではない」「えっ? どういうことですか?」思わず顔を上げる。
「実はだね、中村氏の失踪については、我々警察としても疑問を感じていて、ずっと調査を続けていたんだよ。
だが、彼が行方不明になった前後の状況を考えると、どうしても納得できない点があるんだ。
中村氏がいなくなった日の前日、つまり君との打ち合わせが終わった後、我々は中村氏に直接会っている。
その際の様子は特に変わったところもなく、いつもの彼と同じように見えた。
しかし、翌日になると、彼の姿は忽然と消えていた。
まるで神隠しにあったかのように、何の痕跡も残さずに。
しかも、彼の荷物まで一緒になくなっていたことから、誘拐の可能性も考慮して捜査を開始したんだ。
ところが、1週間経った今でも、中村氏は見つかっていない。
さらに言えば、中村氏と一緒にいたはずの君からも、特にこれといった証言が得られていない。
ということは、中村氏が消えた原因を作ったのは、どう考えても君ということになる。
にもかかわらず、君は事件に関与を否定するどころか、むしろ積極的に肯定しているように見える。
それでは一体誰が得をするのか? と、考えれば自ずと答えが見えてくるだろう。
つまり、事件の黒幕が誰なのかということだよ」
***
ここにあるのは中村氏が死ぬ数日前に撮影されたとする映像だ。
現地の病院がミャンマー政府の指示を受けて秘匿している。
病床の中村本人がカメラ目線で
"出掛けなければよかった "と思う。でも、行かざるを得なかった。怖かったんです。あんなに怖い思いをしたのは初めてでした。あの病院から出ることができなかったんです」と言う。
続いて病院ロビーで中村が答えている。
"外に出てみると、餅がまだそこにあるのが見えました。私は自分に言い聞かせました。『その餅で喉を詰まらせることはない』と。何も食べなかったよ。"
次にこれはミャンマー政府筋に近いという男が匿名を条件に証言している。
「空港で捉えられたあと彼はこの病院に運ばれ、5、6日過ごした」
最後に中村の「内縁の妻だと自称する女」がユーチューブで暴露している。
家族には、「チャンスはある」と言われた。

そして、彼はチャンスを得た。

"病院には娘と息子も一緒にいました。私は彼らに、また両親に会えるんだよと言いました。娘たちは「お父さん、怖がらないで。心配しないで "と言っていました。

彼の家族は、彼が医師の診察を受けることを告げられたという。

"心臓が止まってしまって、もうどうしようもないと言われました。"

彼は病院から家に帰されました。

"大変だ、どうしよう "と言ったんです。

その時、彼は希望と恐怖のサイクルに巻き込まれたのです。

希望は娘と息子だった。
◇ ◇ ◇
自称内縁の妻のチャンネルは当然のことながら大炎上した。まず中村のファンが暴露動画を捏造と決めつけ猛批判した。それに対し、アンチが「動画は本物」と主張し、中村の不倫をあげつらった。中村には当時、人気女性CVと交際していた。ファンたちも「お似合いだよね~」と公認していた。

一方で、擁護派からは中村自身が妻に対して不満を抱いていたことを挙げ、浮気の証拠として妻のツイッターを晒す。妻は必死になって反論するが、すぐにアンチに論破されてしまう。
中村は妻と娘の3人で暮らしていた。
2人の子どもはまだ小さく、経済的に余裕がなかったからだ。中村にとって、それは大きなストレスになっていたようだ。
そして、妻に対する不信感も募っていた。
中村は言う。「自分の病気について話す気になれないのは、それが理由です」
妻も言っていたように思うが、覚えていない。
とにかく、自分が入院することで、子どもたちにも負担をかけてしまうことは確かだと思った。
だから、自分は頑張ることにした。

***
ここで映像は終わる。
「さて、何か質問は?」
刑事はそう言った。
「あの……。どうして私なんですか? もっと適任な人がいるんじゃ……」
「君が一番怪しいと踏んだからだよ」
「そんな……!」
「もちろん、それだけじゃない。君は中村氏の失踪に関わっている可能性が極めて高いと思っている」
「ど、どういうことですか?」
「君のアカウントのプロフィール欄にはこう書いてある。"仕事でミャンマーに行ったことがある"、"東南アジアが好きでよく旅行する""ミャンマーは行ったことがないが興味がある"とね」
刑事は私のスマートフォンを取り出した。
「実はつい最近、ミャンマー政府が日本向けに観光ビザを発行したんだ。条件は日本人であることのみ。しかも、発給対象は20歳以上40歳未満となっている。
しかし、それでは若い旅行者しか集まらないだろう。
そこで政府は、渡航歴のある30歳以上の独身男性を対象に、特別枠を設けたんだよ。これは、表向きは海外ボランティアや国際貢献活動に従事している者に限っているんだが、裏では売春斡旋業者を入国させていると言われている。
だが、君の場合、これが該当しなかった。
なぜか? 君の経歴を調べたところ、君がミャンマーを訪れた記録は見つからなかった。
つまり、君は嘘をついていることになる。
君がもし本当に中村氏の失踪に関わっていた場合、その目的はおそらく金だろう。
ミャンマー政府からの特別枠で日本にやって来て、中村氏から金を騙し取った。
中村氏が消えた時、君はちょうどミャンマーに行っていたことになっている。
パスポートは持っていないが、ミャンマー政府筋が証言してくれるはずだ。
さらに、君のフェイスブックのプロフィールには、中村氏との写真が載っているじゃないか! これは一体何を意味しているのか?……ここまで言えば、もう分かるだろう」
「わ、私は……」
その時、突然病室のドアが開いた。
そこに立っていたのは看護師だった。
「面会時間は終わりです。ご家族の方以外は退出してください」
「私は彼女の夫でしてね」と、刑事が答える。
「夫は許可されておりません」
「いいえ、私は彼女の友人でありますから」
「友人であっても、規則で決まっているんです」と、きっぱり言い切る。
そして、「あなたたち2人も出て行ってください」と続けた。
私たちは追い出されるように部屋を出た。
廊下で私は、涙が止まらなかった。

***
その日の夜のことだった。
病院の中庭で1組の男女がベンチに座っていた。
1人は中年の男、もう1人は若く美しい女である。
男は黒いジャケットに白いシャツを着ており、首元にはシルバーのネックレスをしていた。髪は整髪料できっちりと整えられており、身なりは良い。
一方、女の方はベージュのパンツスーツを着ている。肩まで伸びた黒髪を後ろでまとめていた。
一見するとビジネスマンとキャリアウーマンのカップルに見える。
「どうだい、少しは落ち着いたかい?」
男が尋ねる。
「はい、すみませんでした」
「気にしないでくれよ。俺もまさか君が犯人だとは思わなかったからさ」
「はい」
「それで、今の話、本当なのか?」
「はい」
「そうか……。まあ、ショックなのは分かるけど、あんまり思い詰めるなよ。君は被害者なんだし、仕方ないことだ」
「いえ、私がやったんです」「ん?」
「私が悪いんです。全部、悪いのは私です。申し訳ありませんでした。この償いは必ずします。どうか許してください。お願いします。お願いします。お願いします。
「ちょっと待ってくれ。落ち着いて話をしよう。俺は別に怒ってなんかいないぞ」
「でも、お金も返します。慰謝料も払います。だから、警察だけは勘弁してください。おねがいします。何でも言うこと聞きますから」
「おい、どうしたんだ急に」
「私のせいなんです。すべて、ぜんぶ、わたしのせいです。わたしがわるがったんでずぅう。ゆるじでぐだざいぃー」
「大丈夫だ。誰も君を責めたりしないさ。さぁ、深呼吸して、ほら」
「ひっく、ひっく、ヒッ、ヒック」
「な?」
「……」
「とりあえず、今日はもう帰った方がいいんじゃないか?」
「……はい」

***
翌日、病室で刑事に会った。
昨日のことなどなかったかのように、いつも通り接してくれた。
そして、刑事は言った。
「君には感謝している」
「えっ」
「実はね、中村氏は自殺ではなく、殺された可能性があるんだ」
「ええ!?︎」
「遺体の傷口は鋭利なもので刺されたように見えた。
おそらく、凶器は刃物だろう。
だが、彼が殺される動機を持つ人間など限られている。つまり、彼の失踪には君が関わっている可能性が高いということだ。
しかし、君は潔白だった。それは素晴らしいことだと思う。我々警察は君の味方だよ。何か困ったことがあったら、いつでも相談してくれ。
それと、これは約束だが、君が中村氏を殺した可能性は極めて低いと考えている。
もちろん、100%ではないがね。
じゃあ、また来るよ。元気を出すんだよ。
あっ、そうだ。もし良かったら、うちの署に来てくれないかな? 君が来てくれると助かるんだけど……」
病室を出る直前、刑事は振り返って、こう付け加えた。
「君が犯人じゃないことは分かってるから、安心してくれていいからね」
「え?」
「それでは失礼するよ」
私は呆然と立ち尽くしていた。

***
私はあの日以来、病院に行くのをやめた。
中村さんの件は解決したが、今度は自分のことが心配になったのだ。
私はあれからフェイスブックのアカウントを削除し、プロフィール写真を変更した。
さらに、仕事を辞めることにした。
幸いにも貯金があった。しばらくは働かなくてもいいだろう。
それにしても、どうして私が疑われてしまったのだろうか。
やはり、私の経歴が怪しいと思われたからか? いや、それだけではないような気がする。
きっと、私は嘘をつくのが得意だったからだ。
昔からよく嘘をついてきた。
それがいけなかったのか……。
そんなことを考えていると、私はふと気がついた。
私と同じだ。
誰だって嘘つきじゃないか。
私だけが悪いわけではない。
そう考えることで自分を納得させようとしたが、心の中にポッカリ穴が空いたようであった。
「ねえ、あなた最近どうしたの?」
ある日のこと、職場の同僚が話しかけて来た。
「えっ」
「なんかね、覇気がないっていうかさ。なんかあったの?」
「別に何もないわ」
「そうなの? まあいいわ。ところで、今度みんなで飲み会やるんだけど、よかったら来てみない?」
「ごめんなさい。そういうの苦手なの」
「そっか。残念だなぁ。せっかく新しい出会いがあると思ったのに」
「……」
「じゃあさ、今度の休みにどこか行かない? 買い物とか映画とか」
「それもちょっと」
「うーん、どうしたら来てくれるかな」
同僚は頭を悩ませているようだ。
私は申し訳なく思ったが、「本当に無理なんです。すみません」と頭を下げ、その場を去った。
それからも何度か誘われたが、断り続けた。
やがて諦めてくれたようで、声をかけてくることもなくなった。

***
しばらくすると、上司がやって来た。
「ちょっと話したいことがあるんだが」
そう言われ、会議室に連れてこられた。
「君、辞めたいらしいね」
「はい」
「理由を聞いてもいいかい?」
「人間関係です」
「ほう」
「その人といると、自分が嫌になるんです」
「なるほど。まあ、人間関係は大事だからな」
「はい」
「よし、分かった。退職を認めよう」
「ありがとうございます」
こうして、私の社会人生活は幕を閉じた。
その後、実家に戻り、自堕落に過ごした。
何をするわけでもなく、ただダラダラと過ごしていた。
親からは何度も「働きなさい」と言われたが、適当な返事をして聞き流した。
そんなある日のことである。
インターホンが鳴ったので玄関を開けると、そこには見知らぬ男が立っていた。
年齢は20代後半くらいだろうか。
背が高く、スーツ姿がよく似合っている。
「こんにちは。突然押しかけてしまって申し訳ありません」
「いえ」
「私はこういう者なのですが」
男は名刺を差し出してきた。
『警察』
そこにはそう書かれていた。
「実はお尋ねしたいことがありまして」
「何でしょうか」
「あなたのことについて教えてほしいのです。よろしいですか?」
手にはアイドルグループのグッズが握られていた。「ハニークローバー」
若い女の子7人組だ。かわいいとは思うけど私は興味がない。
「……」
「えっと、これは任意でしてね。断っていただいても構わないんですよ」
少し考えた後、私は答えた。
「分かりました」

***
それから数日間に渡って取り調べを受けた。
警察は熱心に調べたようだ。「中村さんの新作アニメの主題歌、ハニークローバーが起用されたことはご存じでしたよね。どうして黙ってたんですか」「はい」
「どうしてなんですか?」
「……」
「あなたは声優事務所で働いていた。そこで、中村さんと知り合い、一緒に仕事をすることになった。違いますか?」
「……」
「沈黙は肯定と捉えていいですね?」
「……えぇ」
「中村さんは失踪する前日、あなたに電話をかけた。その際、何か変わったことはなかったですか?」
「特には」
「本当ですか? 何か怯えた様子はありませんでしたか? あるいはすごく喜んでいたような」
「いいえ」
「そうですか。これは重要な事なんですけどね。イエスかノーかで貴方に手錠をかけることになる」
警察が言うには中村の事務所はハニークローバーのグッズ開発に関わっていたという。それも画期的な商品だ。ハニークローバーのメンバーをあしらった可愛らしい「萌え太陽電池パネル」をオタク青年に売り込むというのだ。
「ハニ…クロですか? わたしは女性ですし…かわいいとは思いますよ。でも興味はありませんし、太陽電池なんか」

「実はその太陽電池パネルの製造には禁止されているカドミウムが含まれていましてね。タイ警察が国境で押収しました。しかも、タイ国境には亜鉛銅山があるのですよ。カドミウムは採掘時の副産物でしてね。しかも毒性が高い。ミャンマー政府側はカドミウム土壌汚染に苦しめられている」
「その物質を違法に混ぜて日本で販売すると?その計画に中村が関与していたと??」「えぇ、そうです」
「そんなことできるはずないじゃないですか! 証拠はあるんですか?」
「まだない。しかし、可能性は高い」
「ふざけるな!」
「落ち着いてください。とにかく、私たちは真実を知りたいだけです。協力いただけませんかね」
「嫌だと言ったらどうなりますか」
「どうもならない。何も起こらない。でも、このままだと逮捕されるかもしれない」
「……」
「お願いします」
私はため息をつくと、言った。
「分かりました。ただし、条件があります」
「なんです?」
「私にも捜査に参加させてください」

***
私は中村の家に向かった。
家は閑静な住宅街にあった。
「ここか」
表札を確認し、チャイムを押した。
しばらくして、中から女性が顔を出した。
「どちら様でしょうか」
警戒しているようだ。
「すみません。警察のものですが、中村さんについてお話を伺いたいと思いまして」
「えっ?」
女性は驚いた表情を見せた。
「あの、ご主人のことですか?」
「はい」
「どういったことを?」
「中村さんはどんな方だったのか。よく仕事場で話されていたことなどがあれば教えていただければ」
「はぁ」
「差し支えなければで結構なのですが」
しばらく考えた後、彼女は口を開いた。
「とても優しい人でした。いつもニコニコしていて。うちの子も懐いてました。あと、絵が上手でした。似顔絵とか描いてくれるんですよ。そういうの得意みたいで。本当に優しくて良い人なんです」「そうですか」
「あ、これ良かったら」
「ありがとうございます」
私は彼女からもらった菓子折を持って、家を出た。

***
中村の実家を訪れた。
「こんにちはー」
「はい」
「中村さんのご家族の方ですか?」
「いえ、親戚のものです」
「失礼しました。中村さんについてお聞きしたいことがありまして」「なんでしょうか」
「中村さんとは仲がよろしかったようですね」
「まあ」
「最後に会われたのはいつ頃でしたか?」
「先月の頭くらいでしたね」
「それはどこでですか?」
「この近くの公園です」
「なるほど」
「中村さんがどうかされたのですか?」
「ちょっと事件に巻き込まれまして。事情聴取を行っているところなのです」

***
警察署に戻ると、警察官たちが慌ただしく動き回っていた。
「何かあったんですか?」
私は近くにいた刑事に声をかけた。
「ああ、中村さんが見つかったんですよ」「見つかった!?︎」
「ええ。自宅のトイレで倒れているところを発見されました。意識不明の状態で病院へ搬送され、そのまま亡くなりました」
「亡くなった……」「はい。残念なことです」
「遺体の状態は?」
「詳しくは解剖待ちとのことですが、おそらくは死因は心臓発作でしょうね。最近心臓を患っていましたので」
「心筋梗塞ですか?」
「ええ」
「それで遺体はどこに?」
「こちらです」
案内されたのは安置所のような場所だった。白い布がかけられた棺桶が並んでいる。
その中に、中村の姿があった。
「うわっ」
思わず声が出た。
変わり果てた姿になっていた。
「酷い」
「そうですね」
「どうしてこんなことに」
「さぁ、詳しいことは分かりません」
「」
私は中村の遺体に向かって手を合わせた。
そして、思った。
「これは殺人事件だ」
「え? 今なんて言いました?」
「えっと……その、独り言です」
「ははは、おかしな人だな」

***
翌日、私は署内の会議室にいた。そこには二人の男が座っている。一人目の男は目つきが鋭くていかにも犯罪者といった風貌の男だった。年齢は40代後半だろうか。
もう一人は小太りの中年男だった。髪は長くボサボサでメガネをかけており、その奥にはギョロついた目が見えた。一見するとオタクっぽい感じだが、その目は血走っていた。
彼らは私の上司と同僚である。つまり、警察組織の人間だ。
「まず自己紹介をしようか。俺は山根だ。階級は警部補だ。君は確か、鈴木君だったかな」
「はい」
「じゃあ、次は俺だな。名前は山田だ。階級は同じだ。よろしく頼むよ」
「はい」
「では早速質問に移ろうか。昨日、何を聞いたんだ?」
「はい。中村さんが自宅で倒れていたと」
「そうだな」
「どうやら、心筋梗塞で亡くなったらしいと」
「心不全ということだな」
「その後、中村さんの遺体を自宅に運び込みましたよね? その時のことを聞かせてください」「いいだろう」
彼は語り始めた。
「あの日の夕方、中村さんから電話を受けた」
「はい」
「仕事場で倒れたらしく、急いで病院へ向かったのだが、間に合わなかったようだ」
「ええ」
「彼の家に到着した時はすでに息を引き取っており、救急車を呼んだ後だった。それからすぐに遺体を運んだわけだ」
「ご家族に連絡は?」
「もちろんした。連絡はつかなかったが」
「そうなんですか」
「あのぉ、一つ聞いてもいいですか?」
ずっと黙って聞いていた小太りの男が言った。
「なんだね」
「その遺体なんですけど、本当に中村さんなんでしょうか?」
「どういう意味かね?」
「いえ、僕は医者じゃないんで断定はできないのですが、どうもおかしいような気がするんですよね」「どこが?」
「だって、そうでしょう? 顔が違うし体の大きさもちがう」
「そんなことはないはずだが」
私は口を挟んだ。
「ちょっと待ってください。確かに遺体の顔はちがいますが、体は一緒ですよね? それに死後硬直の様子から見て、亡くなってからさほど時間は経っていないはずです。だからまだ温もりがあるんじゃないですか?」「あ、言われてみれば」
「ほれみろ。ちゃんと同じじゃないか」
「でも、僕としては違和感がありますね。もっと若く見えるといいますか」
「おい、あんまり適当なことを言うもんじゃないぞ」
「すみません」
「まあいい。とにかく、中村さんが亡くなったことに変わりはない。今はそれ以上考える必要はないだろう」
「わかりました」「で、お前の聞きたいことはそれだけか?」
「いえ、もう一つあるんです」
「言ってみたまえ」
「中村さんを殺害したのが誰なのかということです」
「なぜ、それを?」
「私は刑事として事件解決のために捜査を行ってきました。その過程で気になることがいくつかあったので」
「ほう」
「まずは、先ほど山田警部補が仰ったように遺体の年齢がちがうことです。普通、人は死んだ後に歳をとります。しかし、中村さんの場合は逆です。遺体が若返っているのです。まるで生き返りかけているかのように」
「なるほど」
「次に、遺体の状態が変です。心臓を患っていたというのは本当ですか?」
「ああ、間違いないだろう。病院で診察を受けていたことも確認済みだ」
「それなのに、どうして心筋梗塞なんかで倒れたんでしょうか?」
「さぁな。私にも分からない」
「最後に、これは一番重要なことですが、犯人の痕跡が全く見つからないということですね。これに関しては全くと言っていい程手がかりがないそうで」
「それはどういうことだ?」
「現場には指紋はおろか髪の毛一本落ちていないようです。これは一体どうしたことなのでしょう」
「我々も不思議に思っていたところだ」
「何か心当たりはありませんか?」
「さっぱりだな」
「そうですか……」
「他には無いのか?」
「はい。今のところはこれくらいしか」
「分かった。では、今日はここまでにしておこう。また後日話を聞くかもしれないが、そのつもりでいてもらえるとありがたい」
「分かりました」
二人は部屋を出て行った。
一人になった私は考えた。「カドミウム…カドミウム」そしてハッと気づいた。スマホで「カドミウム 毒性」を検索する。やっぱりだ。カドミウムは血圧を上昇させ心筋梗塞を起こすリスクがある。ということは、この一連の事件は全部つながっているんじゃないか? つまり、この事件の真の目的は……。
「中村を殺すことだったんだ!」

***
数日後、再び署内の会議室に集められた。今度は二人だ。
「まずは自己紹介から始めましょうか」
「そうだな。俺は山根だ。階級は警部だ」
「僕は山田です。階級は同じです。よろしくお願いしますね」
「はい。こちらこそ」
「早速質問に移りたいと思います。あなたは何を聞かれたんです?」
「はい。私は中村さんについて色々調べました。すると、彼が最近体調を崩していたことが分かってきたので、そのことについて詳しく知りたかったからです」
「具体的にはどのようなことを?」
「えっと、主に病院に行ったかどうかなどですね」
「病院? どこへ行かれたのでしょう?」
「確か、循環器科だったはずですが」
「他には何かありませんでしたか?」
「えーと、特には」
「ありがとうございます。もう結構ですよ」
「あ、あのぉ、一つだけ聞いてもいいですか?」
「なんでしょうか?」
「中村さんの死因は何なんでしょうか?」
「心不全だよ。君たちも知ってるだろう?」
「いえ、そういう意味ではなくて、本当の死因というか」
「どういう意味かな?」
「実は、中村さんの遺体を見た時に、なんだかおかしいと思ったんです。見た目や体の大きさが違いすぎるなと思って」
「それで?」
「あの日、中村さんが倒れたのは仕事場だと聞きました。でも、運ばれてきた時、彼の体は自宅にあったんですよね?それっておかしくないですか?」
「君は何が言いたいのだね?」
「あ、すみません。ちょっと気になってしまって」
「まあ、確かに君の言う通りだが、それがどうしたというのだね?」
「その、もしかしたらなんですけど、彼は自宅で殺されて運ばれたんじゃないでしょうか? そして、その後遺体を運び出した」
「なんのために?」「理由はわかりません。でも、きっと誰かに見せつけるためだったのでしょう」
「見せつける?」
「はい。おそらく、犯人にとって中村さんの死は大きな意味があるものだったのではないでしょうか?」
「なるほど。参考になったよ。ところで君は何者なのだね?」
「私はただの記者です。それじゃ、これで失礼します」
私は会議室を出た。
「待ってくれ」後ろで声がした。あの女の容疑はどうなんだ。ハニークローバーに興味はないと言っていたが、女性アイドルが好きな女は少数派なので怪しまれないだろうと高を括っていると思われる。あの女をもう一度洗え。私は立ち止まった。
「すみません。聞こえなかったもので」
「いや、何でも無い。呼び止めてすまなかった」
「いいえ」
私は今度こそ部屋から出た。
「中村さんを殺したのは山田警部補じゃないかもしれないな……」
それから数日間、私は様々な人に話を聞いた。しかし、誰からも有力な情報を得ることができなかった。それどころか、ますます分からなくなってきた。そもそも、この事件には本当に山田警部補以外の人間が関わっているのかさえ疑わしい。そんなことを考えているうちに、いつの間にか年が明けていた。
1月3日の朝10時頃、私はいつものようにテレビをつけた。すると、そこには衝撃的な映像が流れていた。
『昨夜未明、人気アイドルグループ、ハニークローバーのメンバー、小鳥遊花恋さん(19)が何者かに刺されて死亡しているのが発見されました』
画面に映っていたのは紛れもなく私のよく知っている人だった。
「嘘だろ……」
急いでニュースの詳細を調べる。
「うわぁ」
思わず変な声が出た。
「殺害したのは、同じグループのメンバーでセンターの小日向陽菜さんだそうです。詳しい動機は分かっていないようですが、警察は他のメンバーである、七瀬愛実さんと橘彩香さんの二人にも事情を聞いているということです」
これは夢なのか? 私は頬をつねった。痛かった。
「これが現実だなんて」
私が呆然としている間にも、アナウンサーは次の話題に移っていた。
「続いてのニュースです。先程お伝えしました、ハニークローバーのメンバーである、小鳥遊花恋さんを殺害したとして、殺人容疑で逮捕されたメンバーの七瀬愛実容疑者についてです。彼女は取り調べに対し、自分はやってないと供述しておりますが、警察では容疑を否認する彼女を勾留して、慎重に調べを進めています」
画面が変わる。
「さて次はお天気です。今日の天気は晴れのち雨です。傘を忘れずに持っていきましょう。明日の天気は曇り時々雪です。冷え込みが厳しくなりそうなので、防寒対策はしっかりしていきましょう。それでは今日も一日頑張っていきましょう!」
私はふらつきながら玄関に向かった。
「私も出かける準備しないと」
外に出る。眩しい太陽の光が目を刺激した。
外に出ると、冷たい風が吹いていた。
「寒い」
私はコートを着てマフラーを巻き、駅に向かって歩き始めた。

***
駅から電車に乗り込む。乗客はまばらだった。
「この中に殺人犯がいるかもしれないね」女子高生たちがスマホニュースを話題にしていた。そして私を見つめる。「まさかね」私は彼女たちから視線を外す。その時、一人の男性客が目に入った。
「あの人、どこかで見たことあるような」
私は記憶を探る。そうだ。あの男は中村さんと一緒に居たところを見たことがある!
「すみません」私は男に声をかけた。
「はい?」男が振り向く。
「あなたは中村さんの知り合いの方ですか?」
「ああ、中村とは飲み仲間だよ」
「本当ですか!?」
「本当だけど」
「あの、ちょっと聞きたいんですけど、中村さんが亡くなった日って何をしてました?」
「俺はその日に中村と飲んでて、解散した後は一人で帰ってたよ」
「そうですか」
「それがどうかした?」
「いえ、ありがとうございました」
私は次の駅で降りた。
「なるほどな」
私は近くの公園のベンチに座って、考え事をすることにした。
「つまりこういうことだろ?」
中村さんは自宅で殺された後、山田警部補によって運ばれた。その後、犯人の手によって遺体が運び出された。
そして、犯人はその遺体をハニークローバーのメンバーに見せつけるために犯行に及んだ。
しかし、なぜ? そこまでする必要があるのか?
「分からない」
私は立ち上がった。
「あれ?」私は目の前にあるものに違和感を覚えた。それは、地面に置かれた花束とメッセージカード。
「ハニークローバーへ あなたのことは忘れません」
なるほど。
「そういうことだったんだ」
私はその場を離れた。
2月14日の夜、僕はいつものようにパソコンに向かっていた。
カタカタ キーボードを打つ音だけが響く。
「終わったー」
僕は伸びをした。
「よし、あとは送信っと」
メールの宛先は警視庁捜査一課。内容は僕が今まで集めた情報のまとめ。
カタタタンッ よし、完了だな。
僕は椅子を回転させて後ろを向いた。すると、テーブルの上にはチョコレートが山積みになっていた。
「バレンタインデーだからって、こんなにチョコはいらないよ」
一人呟いてみる。
「でも、せっかくもらったし、食べないわけにはいかないか」
僕は一つ手に取って口に入れた。「うん、美味しい。甘すぎず、苦過ぎずちょうどいい」
そんなことをしているうちに、日付が変わった。
「もう2月15日になったのか」
時計を見る。午前0時45分。
「そろそろ寝るか」
僕は部屋の電気を消した。
3月20日の朝、私は駅のホームにいた。
「間もなく3番線に列車が参ります」
アナウンスが流れる。
「あ〜、疲れたな〜」
私は電車に乗る。
ガタゴト ガタゴト しばらくすると、私の乗っている車両にスーツを着た男性が乗り込んできた。男性は席が空いているにも関わらず、なぜか私の隣に座った。
「ここよろしいかな?」
「えっ、あっはい」
私は動揺を隠せなかった。
「どうぞ」
男性は向かい側の窓際に移動しようとした。その時、男性の足下に何かが落ちていることに気づいた。私はそれを拾い上げた。「これは……」私は息を飲む。そこには一枚の写真があった。小鳥遊花恋が写っていた。しかも、彼女の隣にいる人物に見覚えがある。「まさか……この人が七瀬愛実なのか?」
「ん?どうかされましたか?」
「いえ、なんでもありません。お気になさらず」
「そうですか」
私は写真をカバンの中にしまった。
しばらくして、車内放送が流れた。
「次は〇〇駅です」
「おっと、ここで降りないといけません」
私は慌てて立ち上がる。
「では、失礼します」「はい、またどこかで」私は電車を降りる。
「あの人、一体何者なんだ?」
私は首を傾げた。

***
次の日の昼休みのこと。
「ねえ、昨日のニュース見た?」女子高生の一人が言う。
「ニュース?」
「ほら、ハニークローバーの」
「ああ、あれね」
「メンバーの一人が逮捕されたらしいよ」
「そうなんだ」
私はサンドイッチを口に運んだ。
「名前は確か……そう、七瀬愛実!」
「ぶふぉ!!」
私は口に含んでいたものを吐き出してしまった。
「汚いなぁ」
「ごめん」
私はハンカチを取り出して口を拭う。
「それでさ、そのメンバーの名前が中村悠一っていうんだよ」
「へぇ」
「なんか名字同じだし、もしかしたら兄弟とかじゃない?」
「そうかもね」私は曖昧に返事をする。
中村さんがハニークローバーのメンバーだったなんて……。それに、あの写真の女性と付き合っていたのだろうか? だとしたら、なんで別れたのか気になるところだが、今はそんなことよりも、もっと重要なことがある。
それは、この事件の真相だ。
中村さんを殺害した犯人は誰なのか? なぜ殺害する必要があったのか? 中村さんが持っていた写真の意味は何なのか? そして最後にハニークローバーのメンバー・七瀬愛実は何を考えているのか? 私はスマホを手に取った。
「もしもし、山田警部補ですか?」
「はい、どうしましたか?」
「例の件について調べてほしいことがありまして」
私はまだ見ぬ犯人に向けてメッセージを送った。