教師は娘が切ったのか、髪型を問い詰めるような口調だった。
「誰のものだろ。
その人のものだ。
だから別に、」
「なら、自分のものだから別に」
娘は母親に言い当てられたように、少し怒ったような口調で言うと、母親は「いや、それはでも」と言葉を濁したが、娘の言葉で自分のものではないと言われ、「……ありがとうございます」と礼を述べた。
「お姉さん、もういいから、」母親が娘に話しかける。
「ありがとう」
「もう、いいんですよね」
「うん、もう、いい。
ちょっと、いいから、」
父親が母親に言うが、娘はそちらにいかない。
視線を合わせず、母親の手から、自身の手を取る。
手を握られて驚いた父親が、娘の手を見て、なんだ、と言っているが、娘は無言で、手を握られていて。
何だ、と父親が父親を見ると、父親はあっけなく手を取られ、「いたい」と言って、娘を見た。
母は、母の手に、自分の手の平を当てる。
「いいから、」そう父親は言うが、娘は父親の手を取り、自分の手の平を、母親の手の平に合わせる。
「あ、いたい、」
父親は母親の手に手を当てれば、自分の手に当てることが出来そうだと言うほど、手に力が入る。
父親の手から、自分の手を引き寄せ、母親の手に当てた後は、父親が母親の手から受けたせいで、母親が父親の手から受けたため、握る手が強くなる。
力いっぱい引き寄せられる自分の手に、母親が自分の手を当てれば、強くなる。
強くなった手に、自分が乗っていた手を、娘は、引き寄せれた。
「……ありがとう」と父親は呟いた。
娘は母親の手を両手で掴み、「……ありがとう」と言って、父親から、母親へ視線を移す。
「あなた、、私の……せいで」
「なんで、、、あんな言い方するの」
「言い方? ……あんな言い方して、どうする気だったの?」
「……」
娘にとって、どういうものか分からないまま、聞きたくないと思っていても、言え、と言っている母親からしてみたら、何か言うかもしれないという、少し、恐くなってきてしまった。
「ねぇ、聞いてる?」と母親は尋ねるが、娘は「はい」と返答をするだけだった。
「……」母親は黙っている娘を見て、怒るつもりはないようで、「そう。
……まぁ、いいけど。
……それで、あんまり、あんなに怒る事はないの?」
「いや。
……何となくよ、、」
「……」
「あの、、言い方が」
母親はそれ以上は言わず、娘の部屋に戻って行った。
母親も後に続き、部屋を出ると、「あんまり怒るなって」と、声が掛かった。
「……」娘も黙っている。
母親は娘をちらりと見てから言った。
「私には、あれくらいしか思いつかなかったわ。
それなのに、そんな言い方って……。
それに、何て言って欲しかったの?」
娘は何も答えない。
ただ俯いているだけだ。
母親は溜息を吐いて、「分かったから。
ごめんなさいね」と言い、部屋に戻ろうとする。
娘は母親の後ろ姿を見ているだけで、何もしない。
「じゃあ、明日ね」と母親は娘に言い残し、部屋に入って行く。
部屋の中に入った母親は、扉越しに聞こえる娘の声を聞いてしまう。
「ううん。
……別に。
……気にしないで。
もう寝るだけなんだから、……お休みなさい」と聞こえた。
翌朝、娘はいつも通りに起き、朝食の準備をし、
「お母さん、朝だよ」と母親を起こしに行く。
母親は目を覚まし、身体を起こすが、すぐに横になる。
「どうしたの?」と娘が尋ねても、母親は何も言わずに、また横になった。
母親は布団の中で考えた。
(昨日、