万物理論が盛大にバグって凄まじい作用が生まれるのではないだろうか。
その考えが頭を過ぎっていると横でディック氏が口を開く。
「すごいですね。あれが……うちの妻から聞き及んでおりましたが、まさか本当にそのようなことを言われる方がいたなんて」と俺に告げてきたので俺は「ええ、そうですか」と返事を返すしかできなかった。
ディックがエリファスから孫の顔を催促され不妊治療に通っていた話はあとで聞いた。夫人も悩んでいたが、はからずもハルの研究に救われる形になった。
俺とディック氏はしばらくハルとハルシオンの研究についての会話をしていたが、しばらくして俺は彼に言った。
「研究については、俺に任せておいてくれ。君の奥様は君の研究成果を待っていますよ」と言うと彼は「ええ……わかりました。
妻に伝えておくことを約束しましょう。
あなたのおっしゃる通りにしますのでよろしくお願いします」と頭を下げながら言って来た。俺はそれに答えるようにして「もちろんですよ」と笑顔を浮かべながら言ったのである。すると、エリファスが
「あなたの研究、是非見せて頂きたいものです。きっとハルが喜びそうね」
と笑った。
「私としてもぜひ拝見させていただきたいと思っておりますわ。これからの研究にも役に立ちそうでしてね」と言ってきた。
「ハルシオンさん」と俺は言って彼女を見た。
「私の研究があなた達の役に少しでも立てば幸いです」
ハルシオンはそういって一礼した。その時見せた顔は真剣で、今までのどこか抜けたような感じの顔とは違って凛々しく見えた。
「では」と俺は言って立ち上がる。
「ありがとうございました」
と彼らは言った。ハルシオンの母親は最後に「ハルのことよろしく頼む」と頼んできたのであった。
「ありがとう」
ハルはそう言った。
「うん、ハルもありがとう。ハルのおかげで少し気持ちが晴れた」
ハルシオンの母親の家を出た俺たちはすぐにマンチェスターにある研究所へ向かった。
「よかった……私の研究成果が認められるんだ……」
ハルシオンは嬉しそうだ。
「ハルシオン、これからは僕が支えていくから、安心して研究を続けていいんだよ」と伝えたのだがハルシオンは答えた。
「ありがとう。嬉しいな……」
ハルシオンの声に覇気は無かったがその目は輝いていたように見えたのだった。
俺達はロンドンからマンチェスターへ戻ってすぐに研究所へ向かった。そしてハルシオンの母親とのやりとり、また査察機構から連絡が来たことで、俺は俺の研究が認められることになったことを喜んだ。
ただ一方で少し思うところもあった。果たしてこれで良いのだろうかということだ。俺は俺自身の判断に自信がないわけではない。でも、俺の行動は俺だけの意思に基づいて行ったものではなく全てなりゆきだ。そのことに少し抵抗を感じ始めていたからだ。そんな時だった、突然部屋にあった翡翠タブレットンから音が鳴り響いた。画面にはメッセージが書かれていた。
内容は
『お疲れさま。ハルシオン・カルタシスと会えたかしら?』
という文面からだった。
オプスからのメールだったのである。
俺はすぐさまハルシオンの方を見て彼女に尋ねた。
「今の音聞こえたか?」と聞いたので彼女は首を縦に振った。
俺は画面を操作し、
『さっきはどうも』
そう書いたメッセージを送信するやいなやすぐに返信があった。
『いえいえ』と書かれた文章だ。翡翠タブレットはメルクリウス寮の件で厳格化された新しい魔導通信プロトコルに対応した最新版だ。
オプス先生はこんなこともあろうかと予め準備してくれていたらしい。
その考えが頭を過ぎっていると横でディック氏が口を開く。
「すごいですね。あれが……うちの妻から聞き及んでおりましたが、まさか本当にそのようなことを言われる方がいたなんて」と俺に告げてきたので俺は「ええ、そうですか」と返事を返すしかできなかった。
ディックがエリファスから孫の顔を催促され不妊治療に通っていた話はあとで聞いた。夫人も悩んでいたが、はからずもハルの研究に救われる形になった。
俺とディック氏はしばらくハルとハルシオンの研究についての会話をしていたが、しばらくして俺は彼に言った。
「研究については、俺に任せておいてくれ。君の奥様は君の研究成果を待っていますよ」と言うと彼は「ええ……わかりました。
妻に伝えておくことを約束しましょう。
あなたのおっしゃる通りにしますのでよろしくお願いします」と頭を下げながら言って来た。俺はそれに答えるようにして「もちろんですよ」と笑顔を浮かべながら言ったのである。すると、エリファスが
「あなたの研究、是非見せて頂きたいものです。きっとハルが喜びそうね」
と笑った。
「私としてもぜひ拝見させていただきたいと思っておりますわ。これからの研究にも役に立ちそうでしてね」と言ってきた。
「ハルシオンさん」と俺は言って彼女を見た。
「私の研究があなた達の役に少しでも立てば幸いです」
ハルシオンはそういって一礼した。その時見せた顔は真剣で、今までのどこか抜けたような感じの顔とは違って凛々しく見えた。
「では」と俺は言って立ち上がる。
「ありがとうございました」
と彼らは言った。ハルシオンの母親は最後に「ハルのことよろしく頼む」と頼んできたのであった。
「ありがとう」
ハルはそう言った。
「うん、ハルもありがとう。ハルのおかげで少し気持ちが晴れた」
ハルシオンの母親の家を出た俺たちはすぐにマンチェスターにある研究所へ向かった。
「よかった……私の研究成果が認められるんだ……」
ハルシオンは嬉しそうだ。
「ハルシオン、これからは僕が支えていくから、安心して研究を続けていいんだよ」と伝えたのだがハルシオンは答えた。
「ありがとう。嬉しいな……」
ハルシオンの声に覇気は無かったがその目は輝いていたように見えたのだった。
俺達はロンドンからマンチェスターへ戻ってすぐに研究所へ向かった。そしてハルシオンの母親とのやりとり、また査察機構から連絡が来たことで、俺は俺の研究が認められることになったことを喜んだ。
ただ一方で少し思うところもあった。果たしてこれで良いのだろうかということだ。俺は俺自身の判断に自信がないわけではない。でも、俺の行動は俺だけの意思に基づいて行ったものではなく全てなりゆきだ。そのことに少し抵抗を感じ始めていたからだ。そんな時だった、突然部屋にあった翡翠タブレットンから音が鳴り響いた。画面にはメッセージが書かれていた。
内容は
『お疲れさま。ハルシオン・カルタシスと会えたかしら?』
という文面からだった。
オプスからのメールだったのである。
俺はすぐさまハルシオンの方を見て彼女に尋ねた。
「今の音聞こえたか?」と聞いたので彼女は首を縦に振った。
俺は画面を操作し、
『さっきはどうも』
そう書いたメッセージを送信するやいなやすぐに返信があった。
『いえいえ』と書かれた文章だ。翡翠タブレットはメルクリウス寮の件で厳格化された新しい魔導通信プロトコルに対応した最新版だ。
オプス先生はこんなこともあろうかと予め準備してくれていたらしい。