俺だって自分勝手なことばかりしてきたのだから。
俺は彼女の力になるべく ハルシオンの言葉を聞きながら言った。
「俺からも魔導査察機構に話を通しておく」
「ありがとう……」
ハルシオンも分かっていたみたいだ。
しかし認めてもらえなければまた始めなければならない。
認めてもらうためには認めてくれる人間が必要なのだということを。
俺が話そうとした時にドアが開かれた。
入ってきたのはエリファスさんと息子さんと思われる男性だ。
とても背が高く筋肉質の体型であることが一目で分かった。
俺は立ち上がり自己紹介をした。
すると彼も挨拶をし返してくれたが、彼が俺に興味を示したのはハルシオンのことだったらしい。
俺はメルクリウス寮で起きた出来事をかいつまんで話した。
俺がソファに座り直すのを見ていた彼の父親は
「ほう……この方が、あなたの研究の」と言った。
彼はハルシオンが自分に対して緊張した様子であることに気がついたのか、「そんなに硬くならず、座ったままで構わないですよ」といったがハルシオンは彼の言葉を聞いておらず民警の連中と同じ態度を取っている。
エリファスはそんな娘の様子を見てため息をつき、息子の方に向くように促すようなしぐさを見せた。
俺はその様子を黙って眺めていた。
そして彼の口が開かれかけたその時だった。
『お待ち下さい』
壁がスライドして動画が始まった。
誰かが立ち上がろうとしている。
ハルシオンだ。
映像の彼女は別人のように輝いていた。
その表情は自信と威厳に満ち宗教画のようだった。
エリファスの御長男ディック氏は新進気鋭の魔道査察官でハルシオンと一つ違いだ。つまり俺は事実上、新郎として家族会議に諮られることになる。
ううむ、ますます身がこわばる。
壁の宗教画は魔道査察官が仕事する時に掲げるしきたりがある。秩序の秩序を監督する者をさらに監視する、いわば神の視座を絵画が代理しているのだ。
ディック氏の見守る中、エリファスが登壇した。アーレン・ブラッド作 1833年
そして『宇宙の憲法停止』に一礼した彼女はゆっくりと話し出した。
「これはこれは皆さんご機嫌麗しゅうございますわね」
挨拶を終え本題に入る。
「さて、本日ご出席いただいたのは他でもありません。ハルシオン・カルタシスの研究に関すること、及び実験内容に不審点があったことをお伝えしたく」と。その件でメルクリウス寮の舎監だった俺の母さんも同席しているのだ。
エリファスは幽霊騒動の件には触れず、そのまま続ける。
〈サリーシャかあさん。大丈夫だ。僕がついてる) 俺は目くばせした。
「まず一つ目。
先日、我が娘があなたのお子様に不用意に話しかけたことでしたわ。わたくしもハルシオンの研究のことは深く存じておりませんでしたわ」
サリーシャが恐縮する。
するとディック氏が口を挟んだ。「過剰な監督は自由な校風を損なう。オプス教授だってハルシオン――特別研究員の独自性に関与できない」
「ですが、あの方はどうもあなたが何かの研究を進めていることは知っていたようでしたが、何をしているかについては知らないそうですわね」と。
セキュリティー審査項目は情報漏洩に神経を尖らせている。特に複数にまたがる研究は機密保持に関してなあなあに成りやすく横断的な情報漏洩を招く。
ディック氏はそういう管理のゆるみでなくむしろ無関心を問題視している。
「まぁ、メルクリウス寮の事件は巧妙というかしてやられた感があります」
魔導査察機構はノースに出し抜かれて快く思ってないのは確かだ。
俺は彼女の力になるべく ハルシオンの言葉を聞きながら言った。
「俺からも魔導査察機構に話を通しておく」
「ありがとう……」
ハルシオンも分かっていたみたいだ。
しかし認めてもらえなければまた始めなければならない。
認めてもらうためには認めてくれる人間が必要なのだということを。
俺が話そうとした時にドアが開かれた。
入ってきたのはエリファスさんと息子さんと思われる男性だ。
とても背が高く筋肉質の体型であることが一目で分かった。
俺は立ち上がり自己紹介をした。
すると彼も挨拶をし返してくれたが、彼が俺に興味を示したのはハルシオンのことだったらしい。
俺はメルクリウス寮で起きた出来事をかいつまんで話した。
俺がソファに座り直すのを見ていた彼の父親は
「ほう……この方が、あなたの研究の」と言った。
彼はハルシオンが自分に対して緊張した様子であることに気がついたのか、「そんなに硬くならず、座ったままで構わないですよ」といったがハルシオンは彼の言葉を聞いておらず民警の連中と同じ態度を取っている。
エリファスはそんな娘の様子を見てため息をつき、息子の方に向くように促すようなしぐさを見せた。
俺はその様子を黙って眺めていた。
そして彼の口が開かれかけたその時だった。
『お待ち下さい』
壁がスライドして動画が始まった。
誰かが立ち上がろうとしている。
ハルシオンだ。
映像の彼女は別人のように輝いていた。
その表情は自信と威厳に満ち宗教画のようだった。
エリファスの御長男ディック氏は新進気鋭の魔道査察官でハルシオンと一つ違いだ。つまり俺は事実上、新郎として家族会議に諮られることになる。
ううむ、ますます身がこわばる。
壁の宗教画は魔道査察官が仕事する時に掲げるしきたりがある。秩序の秩序を監督する者をさらに監視する、いわば神の視座を絵画が代理しているのだ。
ディック氏の見守る中、エリファスが登壇した。アーレン・ブラッド作 1833年
そして『宇宙の憲法停止』に一礼した彼女はゆっくりと話し出した。
「これはこれは皆さんご機嫌麗しゅうございますわね」
挨拶を終え本題に入る。
「さて、本日ご出席いただいたのは他でもありません。ハルシオン・カルタシスの研究に関すること、及び実験内容に不審点があったことをお伝えしたく」と。その件でメルクリウス寮の舎監だった俺の母さんも同席しているのだ。
エリファスは幽霊騒動の件には触れず、そのまま続ける。
〈サリーシャかあさん。大丈夫だ。僕がついてる) 俺は目くばせした。
「まず一つ目。
先日、我が娘があなたのお子様に不用意に話しかけたことでしたわ。わたくしもハルシオンの研究のことは深く存じておりませんでしたわ」
サリーシャが恐縮する。
するとディック氏が口を挟んだ。「過剰な監督は自由な校風を損なう。オプス教授だってハルシオン――特別研究員の独自性に関与できない」
「ですが、あの方はどうもあなたが何かの研究を進めていることは知っていたようでしたが、何をしているかについては知らないそうですわね」と。
セキュリティー審査項目は情報漏洩に神経を尖らせている。特に複数にまたがる研究は機密保持に関してなあなあに成りやすく横断的な情報漏洩を招く。
ディック氏はそういう管理のゆるみでなくむしろ無関心を問題視している。
「まぁ、メルクリウス寮の事件は巧妙というかしてやられた感があります」
魔導査察機構はノースに出し抜かれて快く思ってないのは確かだ。