何かしてあげたいと焦ってる間にいつの間にハルシオンからたくさんもらっている。そう思えてくる。
俺は、俺は……どうすればいい。俺は、この先どうしたらいいのだろうか。
「ハルシオンのことは心配ない。俺が何とかする。それより君の方は大丈夫か?」
「はい。なんとかやっています。」
「そうか。」
ディック氏がハルシオンの去った扉を見つめながら言う。「あいつには幸せになって欲しい。だから頼む」とだけ言い残して彼は去っていった。
俺は彼の背中に向かって言う。
「はい。」
ハルシオン・カルタシスは部屋を出ると廊下を小走りで駆け出した。
彼女の向かう先は地下にある研究室だ。その道中、彼女は思った。
『ああ、これでいいんだ。』
と。
ハルシオン・カルタシスは思う。
『私は、私のことだけを考えて生きていこう。』と。
彼女はそう決意したのであった。
彼女はこれから自分がやろうとしていることを、『研究』と呼ぶことにしたのだった。
ハルシオン・カルタシスは部屋に戻ると机の上に置いてある小さな箱を開けた。
そこには指輪が入っている。
それは、ハルシオンとオプスが二人で選んだものだった。
ハルシオン・カルタシスはこの指輪を指にはめ、目を閉じ、祈る。
『どうか、神様、私達の願いを聞き届けてください』と。
ハルシオン・カルタシスは、研究を続けることに決めた。
しかし水星を司る守護神メルクリウスは水星逆行期間中は真逆の働きをする。すなわち願望を成就するどころか妨害した。
ハルシオンはそのことを重々承知の上でイチかバチかの賭けに出たのだ。ノース研究員が呪術医学会と癒着して医療機器メーカーから多大な研究費を頂戴しているという内部告発。それに関してハルシオンは疑問を抱いていた。ディック氏は胡散臭い部分があるがハルシオンにとっては実の兄だ。裏切るとは思えない。誰かが一族や学院や魔導査察機構を嵌めようとして虚偽の告発をしたのではないか。そして研究が研究が破綻すれば犯人にとって御の字である。ならば、全ての願いがあべこべになるこの時期に置いてハルシオンが研究の存続を願えばどうなるか。
「研究を失敗させる企み」が失敗して犯人は破滅するはずである。もちろん、水星逆行中は全て確実に反作用が働くという補償もない。
本当にハルシオンの研究が失敗し、犯人も捕まるという最悪のケースもありうる。その場合は俺もハルシオンももちろん犯人も逮捕されるだろう。
オプスもノースもディック氏もお縄になる。
それでもハルシオンは覚悟を決めて祈った。
一番のハッピーエンド。それは無実が証明され、嵌めようとした奴だけが捕まること。
ハルシオンは一心不乱に祈った。
すると、グルッパと名乗る公益通報者から驚くべき告発がなされた。数日後、オプスから呼び出しがあったのだ。
オプスから話を聞いた後、俺達はメルクリウス寮の移転作業を一時中断することにした。俺達も一緒に行くことになったからだ。オプスに連れられ、俺達は旧寮の幽霊騒ぎについて話し合った会議室にやってきた。「ここが、私達が使っていた会議室よ」
オプスが言った。
俺達が入ると、中にはオプスとディック氏とノースがいた。
ディック氏の表情はどこか強張っているように見えた。
オプスが俺達に座るように促した後、俺達の前に立つ。「オプス教授は、エリファス様の査問会に召喚されたのよ。」
オプスが言った。
「エリファス様は、オプス教授がグルッパと名乗る者からの匿名通報によって査問会に召喚されたのです」
オプスが言う。「私は、エリファス様に呼び出され、事情を聞いた後、すぐにここに駆けつけたのよ。」
俺は、俺は……どうすればいい。俺は、この先どうしたらいいのだろうか。
「ハルシオンのことは心配ない。俺が何とかする。それより君の方は大丈夫か?」
「はい。なんとかやっています。」
「そうか。」
ディック氏がハルシオンの去った扉を見つめながら言う。「あいつには幸せになって欲しい。だから頼む」とだけ言い残して彼は去っていった。
俺は彼の背中に向かって言う。
「はい。」
ハルシオン・カルタシスは部屋を出ると廊下を小走りで駆け出した。
彼女の向かう先は地下にある研究室だ。その道中、彼女は思った。
『ああ、これでいいんだ。』
と。
ハルシオン・カルタシスは思う。
『私は、私のことだけを考えて生きていこう。』と。
彼女はそう決意したのであった。
彼女はこれから自分がやろうとしていることを、『研究』と呼ぶことにしたのだった。
ハルシオン・カルタシスは部屋に戻ると机の上に置いてある小さな箱を開けた。
そこには指輪が入っている。
それは、ハルシオンとオプスが二人で選んだものだった。
ハルシオン・カルタシスはこの指輪を指にはめ、目を閉じ、祈る。
『どうか、神様、私達の願いを聞き届けてください』と。
ハルシオン・カルタシスは、研究を続けることに決めた。
しかし水星を司る守護神メルクリウスは水星逆行期間中は真逆の働きをする。すなわち願望を成就するどころか妨害した。
ハルシオンはそのことを重々承知の上でイチかバチかの賭けに出たのだ。ノース研究員が呪術医学会と癒着して医療機器メーカーから多大な研究費を頂戴しているという内部告発。それに関してハルシオンは疑問を抱いていた。ディック氏は胡散臭い部分があるがハルシオンにとっては実の兄だ。裏切るとは思えない。誰かが一族や学院や魔導査察機構を嵌めようとして虚偽の告発をしたのではないか。そして研究が研究が破綻すれば犯人にとって御の字である。ならば、全ての願いがあべこべになるこの時期に置いてハルシオンが研究の存続を願えばどうなるか。
「研究を失敗させる企み」が失敗して犯人は破滅するはずである。もちろん、水星逆行中は全て確実に反作用が働くという補償もない。
本当にハルシオンの研究が失敗し、犯人も捕まるという最悪のケースもありうる。その場合は俺もハルシオンももちろん犯人も逮捕されるだろう。
オプスもノースもディック氏もお縄になる。
それでもハルシオンは覚悟を決めて祈った。
一番のハッピーエンド。それは無実が証明され、嵌めようとした奴だけが捕まること。
ハルシオンは一心不乱に祈った。
すると、グルッパと名乗る公益通報者から驚くべき告発がなされた。数日後、オプスから呼び出しがあったのだ。
オプスから話を聞いた後、俺達はメルクリウス寮の移転作業を一時中断することにした。俺達も一緒に行くことになったからだ。オプスに連れられ、俺達は旧寮の幽霊騒ぎについて話し合った会議室にやってきた。「ここが、私達が使っていた会議室よ」
オプスが言った。
俺達が入ると、中にはオプスとディック氏とノースがいた。
ディック氏の表情はどこか強張っているように見えた。
オプスが俺達に座るように促した後、俺達の前に立つ。「オプス教授は、エリファス様の査問会に召喚されたのよ。」
オプスが言った。
「エリファス様は、オプス教授がグルッパと名乗る者からの匿名通報によって査問会に召喚されたのです」
オプスが言う。「私は、エリファス様に呼び出され、事情を聞いた後、すぐにここに駆けつけたのよ。」