俺はそんな彼女に対し改めて尊敬の念を抱いた。それから俺が画面を見つめている間にも彼女は話を続ける。
『魔導査察機構の人から話は聞かせてもらったわ。応用魔導工学の研究予算は増枠が承認された。おめでとう。君のお陰だわ』という文字が表示される。
「ねえ……どういうこと……あんた、何かしたの……?」
ハルシオンは尋ねてきたが話していいかどうかわからないので言うべきでないと判断し、
「まあまあ」と言いながらごまかすことにした。不妊治療分野の可能性に関してノースから呪術医学会に例の小冊子を回してもらったのだ。結果は上々でこの翡翠タブレットもメーカーから供与されたという次第だ。
そんなやり取りをしていると、次の瞬間また別の画面が現れたのだ。発信人はディック氏だった。
『査察官としてではなくハルの友人としての俺から君に忠告しておく。まず最初にハルは、君のことを大切に思っているみたいだから、報いるべきだろう。それからハルシオン・カルタシス、お前のことは、お前の研究の協力者、お前の理解者を含め数え切れないほどの人間が認識している。俺もお前とお前の夫が望むのであれば研究に協力できる立場にいる』と表示される。
俺は思わず「どういう意味でしょうか?研究に協力するということはハルがあなたと一緒に住んで、一緒に生活しろということですかね。
もしそうだったらお断りしたいところですが」といった。画面の中のディック氏は言う。
正直言って結婚相手の兄貴と同じ敷地内で暮らすというのは気が進まない。
「いやいや。君たちと査察官が同じ施設に入ることは残念だけど難しい。利益相反と便宜供与になるからだ。だが、ハルシオン・カルタシスの住居をセキュリティー対策の一環として提供するという約束は出来るかもしれない。」
ハルシオンが驚いてこちらを見る。
「それは……お腹の赤ちゃんがと安心して暮らせるということかな……」と言ったので俺は
「まだよくわからないけど……」と不安げに答える。
監督省庁のセキュリティーポリスがつかず離れずの位置で護衛任務にあたるというが妹を監視下に置きたいディック氏の下心が見え見えだ。
彼女は
「そっか……」と言って俯いた。それからしばらく無言の時間が続いた後、彼女は言った。
「私ね、自分でも感情融合技術の進展にどんな未来が待っているか研究テーマが自分に何をさせようとしているのか百パーセント把握していたわけじゃないけど……でも、あなたが私を元気づけようとしてくれたことはすごくわかったから……だから私はここにいていいと思ったんだ……私はどんな善意も拒まずここで研究をすることにするよ」といってから俺達を見て微笑みかけたのである。
その笑顔はどこか切なくも思えたが俺はそれでもいいと思っていた。だから彼女の言葉を信じることにしよう。そう思っていた。
そのタイミングでまた通知が届いていることに気づく。俺はその画面に視線を向けた。するとそれは来客通知だった。
俺はそのことをハルシオンに伝える。するとハルシオンが言った。
「あの、オプス教授が今、玄関前に来てくれているみたいなんだけど、どうしましょう」と聞いてきたので俺は
「せっかくだし話してくるといい」と言う。ハルシオンはそれを聞いて「じゃあちょっと失礼します」と言って部屋の外に出ていった。彼女が戻ってくるまで、俺達は待つことにしたのである。
ツルシダがしげるプロムナードに若草色のスカートがトコトコと駆けていく。
数分が経ち、ハルシオンは帰ってきた。
『魔導査察機構の人から話は聞かせてもらったわ。応用魔導工学の研究予算は増枠が承認された。おめでとう。君のお陰だわ』という文字が表示される。
「ねえ……どういうこと……あんた、何かしたの……?」
ハルシオンは尋ねてきたが話していいかどうかわからないので言うべきでないと判断し、
「まあまあ」と言いながらごまかすことにした。不妊治療分野の可能性に関してノースから呪術医学会に例の小冊子を回してもらったのだ。結果は上々でこの翡翠タブレットもメーカーから供与されたという次第だ。
そんなやり取りをしていると、次の瞬間また別の画面が現れたのだ。発信人はディック氏だった。
『査察官としてではなくハルの友人としての俺から君に忠告しておく。まず最初にハルは、君のことを大切に思っているみたいだから、報いるべきだろう。それからハルシオン・カルタシス、お前のことは、お前の研究の協力者、お前の理解者を含め数え切れないほどの人間が認識している。俺もお前とお前の夫が望むのであれば研究に協力できる立場にいる』と表示される。
俺は思わず「どういう意味でしょうか?研究に協力するということはハルがあなたと一緒に住んで、一緒に生活しろということですかね。
もしそうだったらお断りしたいところですが」といった。画面の中のディック氏は言う。
正直言って結婚相手の兄貴と同じ敷地内で暮らすというのは気が進まない。
「いやいや。君たちと査察官が同じ施設に入ることは残念だけど難しい。利益相反と便宜供与になるからだ。だが、ハルシオン・カルタシスの住居をセキュリティー対策の一環として提供するという約束は出来るかもしれない。」
ハルシオンが驚いてこちらを見る。
「それは……お腹の赤ちゃんがと安心して暮らせるということかな……」と言ったので俺は
「まだよくわからないけど……」と不安げに答える。
監督省庁のセキュリティーポリスがつかず離れずの位置で護衛任務にあたるというが妹を監視下に置きたいディック氏の下心が見え見えだ。
彼女は
「そっか……」と言って俯いた。それからしばらく無言の時間が続いた後、彼女は言った。
「私ね、自分でも感情融合技術の進展にどんな未来が待っているか研究テーマが自分に何をさせようとしているのか百パーセント把握していたわけじゃないけど……でも、あなたが私を元気づけようとしてくれたことはすごくわかったから……だから私はここにいていいと思ったんだ……私はどんな善意も拒まずここで研究をすることにするよ」といってから俺達を見て微笑みかけたのである。
その笑顔はどこか切なくも思えたが俺はそれでもいいと思っていた。だから彼女の言葉を信じることにしよう。そう思っていた。
そのタイミングでまた通知が届いていることに気づく。俺はその画面に視線を向けた。するとそれは来客通知だった。
俺はそのことをハルシオンに伝える。するとハルシオンが言った。
「あの、オプス教授が今、玄関前に来てくれているみたいなんだけど、どうしましょう」と聞いてきたので俺は
「せっかくだし話してくるといい」と言う。ハルシオンはそれを聞いて「じゃあちょっと失礼します」と言って部屋の外に出ていった。彼女が戻ってくるまで、俺達は待つことにしたのである。
ツルシダがしげるプロムナードに若草色のスカートがトコトコと駆けていく。
数分が経ち、ハルシオンは帰ってきた。