思わず声を上げて驚いた。
 不登校になった子は、しばらく休んだせいで学校に行きづらくなり、そこからずっと通えなくなるというケースが多いと聞いていたからだ。

 でも、驚いたと同時に、尊敬にも似た感情が湧いてきた。
 何年も来れていなかった学校に、新学期になる日などならともかく、なんでもない今日を選んで投稿するなんて。私には想像もつかないけれど、相当な勇気が必要だったはず。

 いったいどんな子なんだろうかと思い、教室をのぞいてみる。

「……はっ?」
「ん? どしたの、志保」

 ほとんど吐息のような声が出た。四辻恵と書かれたネームマグネットの貼られた席に座っている男の子に見覚えがあったからだ。

「うそ、あの子……」

 その子は、昨日保健室で出会った男の子だった。
 こんなことがあっていいのだろうか。まさか、昨日のあんな傍若無人な男の子が、クラスメイトだったなんて。

「あ、もしかして志保も、四辻くんのかっこよさに気づいちゃった……!?」
「え、いや」
「私が来てからちょっとしたあたりに四辻くんがきたんだけどね、めっちゃ背が高くて! 百七十後半……ううん、百八十くらいあるかな?」

 顎に手を当てて、四辻くんのことを分析するように呟く菜緒。

「しかもなかなかの美形だよね……今はみんな遠慮して話しかけてないけど、あれはすぐに人気出るよ。間違いない」
「菜緒の予言は当たりやすいもんね」
「ねー、今のうちに話しかけに行こうよ!」

 えっ、と言葉に詰まった。私は昨日すでに顔を合わせているので、なんとなく気まずい。
 それをどう説明すべきかと悩んでいると、菜緒に腕を引かれた。

「ほら、はやく!」
「あ、ちょっと……!」

 返事のない私に痺れを切らしたようだ。
 クラスメイトたちの視線を受けながら、私たちは四辻くんの席へ向かった。