非の打ち所がない優等生。中学生になったばかりなのに、ひどく大人びている真面目な子。
　親戚が集まる時に、必ず一度は言われる言葉だ。
　なんて便利な言葉なんだろう、と他人事のように思う。
　本ばかり読んでいて明るいとは言い難い、そんな、勉強しか取り柄のない私が、まるで特別な人間であるかのように言い表せる魔法の言葉。

　……いや。特別だというのは、あながち間違いではないかもしれない。
　成績はいつも上位をキープ。課題も抜かりなく終わらせるし、行事には積極的に参加する。中学校生活が始まって早一年、既に私は先生からの信頼を得ていた。
　非の打ち所がないかは不明だが、私を優等生と呼ばずしてどうするのか、というのが正直な感想で。

（……まただ）

　また、自分を過大評価している。いつからだろうか、この癖が染み付いてしまったのは。
　親戚にいつももてはやされるせいで、いつのまにか自分自身が本当に特別な存在だと錯覚してしまった。いい加減にどうにかしなくてはいけないと思うものの、なかなか直らない。

「はい、じゃあ今から今週の課題出すので、金曜日の漢字テストまでに提出するように」

　先生のその言葉で、下に向けていた視線を黒板に向ける。先ほどまでは書かれていなかった内容が付け加えられていたので、ぎゅっと握り直したシャープペンをノートに走らせた。