どこにいても、何をしていても、いつもどこか息苦しい――こんな自分のことが大嫌いだ。



 騒がしい雨の音を聞きながら、左手で全体的に癖のある髪を撫でつけて、時折くるくると指先で弄る。右手では綺麗とは言えない文字で黒板の文字を書き起こした。先生は教卓に手をついて、もう三回目にもなる形容詞の説明を繰り返している。

「あずまいー」

 前の席に座る男の子が、のけぞるように私の方を見て名前を呼んだ。

「……ん、どした」
「この漢字わかんねぇんだけど、なんて書くの?」

 今はワークを解く時間じゃないし、漢字が分からないなら辞書でひくなりすればいいのに。
 そんな思いを飲み込んで、これはね、とワークを覗き込む。

 安栖、安栖さん、安栖ちゃん。
 誰かが私の名前を呼ぶのは、手助け(という名の雑用)を求めている時ばかりだ。女の子たちのグループに混ざって恋話をするわけでも、一緒に移動教室をするお誘いでもない。
 それでも私は、薄っぺらすぎるその友情を守るために必死になるのだ。