二枚のチケットを回収して、彼は静香の元へ早歩きで向かう。
その姿を見届けたあと、忘れないうちにとスマホのカレンダーに『静香・裕太くんと水族館』と追加した。
土曜日に入った予定を見る度に二人の名前がスマホに載っていることが嬉しい。

「さようなら」

クラスメイトと一緒に頭を下げて、今日も一日が終わる。
まだまだ教室から出る人のが少ないうちにパタパタと廊下に出て、急いでお手洗いに向かう。
部活が始まる直前になると、鏡の前がダダ混みになるのだ。

帰る前にわざわざお手洗いで髪の毛を整えるのは、帰るためのモチベーションを上げるためである。
来るときは好きな人に会えるからという学校に来る理由があるけど、正直帰るのはだるい。
家は好きだけど。大好きだけど。
この時間を待ち望んでいたことに間違いはないのだけど。