「……ミラーマジック、じゃない?」

鈴谷さんは言いにくそうにしながらも、私のドンと来い的な視線に観念したかのように口にした。
でもそれより、彼女が放ったその言葉に驚いた。
なんでこの子は私の密かな習慣の、誰も知らないであろうその名称を知っているのだろう。

「なんで……?」

なんで知ってるの?
なんでそう思うの?
なんで、ミラーマジックのことを疑うの……?
聞きたいことは山ほどあった。
なのに。いや、だからなのか、私ははっきり聞くことが出来なかった。

「知らない?ミラーマジックの言い伝え」

彼女は声を小さくして言った。
……なにそれ。知らない。知るわけない。
ミラーマジックは、私に勇気をくれるだけの、笑顔の習慣のはずだもの。