「そうかな」

色々話して厄介なことになるのは避けたいし、ここは合わせよう。
どうせ数十分経ったら忘れるだろうし、人一倍感情に波があるということにでもしておけばいい。

「うん。それってさ、もしかして……」

鈴谷さんはそこまで口にして黙り込んでしまった。
もしかして病気?とか、そういうことを聞こうとしたのだろう。
今の時代、精神科に通う人も少なくないわけだし、私がそれに該当していてもおかしくない。

「言っていいよ。どうせ明日には、綺麗さっぱり忘れてるから」

これはが私の口癖だった。
日中のことはほとんど覚えていないことの方が多いのが私の中では普通のことで、別にそれがどうとかはもう思っていない。