何となく早足で家路を辿る。
いつもは空を見上げて雲の流れや日の傾きに癒されながら歩く道のりも、今日は地面ばかりが目に入る。
アスファルトの黒に近い灰色が、ずっと変わらずに流れ続けている。

「ただいま」

いつもより長く感じた道のりの果てに、やっと帰って来ることが出来た我が家。
代わり映えのしない地面ばかりを見ていると、いつもは一瞬のような時間が永遠に感じた。

疲れたままの足で階段を上り、自分の部屋へ入ったら、いつも通りクーラーをかけて綺麗に畳まれた薄手のパジャマに着替えた。
そのままの手でスマホを開き、再生ボタンのマークをタッチして動画アプリを開く。
登録チャンネルの新しい投稿をスクロールするもあまり私の興味が引かれるものはなかったから、電源ボタンをカチッと押して画面を暗くした。