中庭のベンチに腰掛けると彼女は話を切り出した。
「ねえ那月くーん、先生が言ってたやつ、何描く?私、迷いすぎて決まんないんだよね、結構大きいコンテストなんでしょ?」
「まだ決めてない。多分、風景画」
「おー。っていうか、那月くんっていつも風景画描いてるね。飽きないの?」
…飽きるも飽きないも、それしか描けないんだ。少なくとも家族や僕の絵を見る人は、それを望んでいる。
「……別に。前からそのつもりだから」
「もったいないなぁ、那月くん上手いんだから、人物画とかも絶対上手いと思うけど。ねえ、描いてみない?私、那月くんの被写体にでもなろうかな。あ、そしたら美少女にしてよ?私も那月くん描こっかなー」
彼女はふざけてそう言い、にこりと笑った。無邪気に笑い、あれでもないこれでもないと楽しそうに考える彼女を見ていると、羨ましくなった。あと、前までの自分と重ねてしまって少し、息苦しく感じた。
「僕には描けないよ」
「え?なんで?まだ描いたことないんだから、いきなり決めつけるなんて良くないよー。那月くんならきっと…」
「……だから、描けないんだって。君には僕の気持ちはわかんない」
どうして何も知らない彼女は無責任にそう言うのだろうか。いつもなら底抜けに明るい太陽のような笑顔もこの時ばかりは少しムカついた。僕のことなんて、一ミリも知らないくせに、わかったこと言わないでよ。
そんな言葉が口からこぼれ出そうになり、すんでのところで残った理性がそれを止めた。
だけど我に帰った時、彼女を見るとその顔からは笑みが消え、瞳は僕に焦点を当て、大きく見開いていた。
「ねえ那月くーん、先生が言ってたやつ、何描く?私、迷いすぎて決まんないんだよね、結構大きいコンテストなんでしょ?」
「まだ決めてない。多分、風景画」
「おー。っていうか、那月くんっていつも風景画描いてるね。飽きないの?」
…飽きるも飽きないも、それしか描けないんだ。少なくとも家族や僕の絵を見る人は、それを望んでいる。
「……別に。前からそのつもりだから」
「もったいないなぁ、那月くん上手いんだから、人物画とかも絶対上手いと思うけど。ねえ、描いてみない?私、那月くんの被写体にでもなろうかな。あ、そしたら美少女にしてよ?私も那月くん描こっかなー」
彼女はふざけてそう言い、にこりと笑った。無邪気に笑い、あれでもないこれでもないと楽しそうに考える彼女を見ていると、羨ましくなった。あと、前までの自分と重ねてしまって少し、息苦しく感じた。
「僕には描けないよ」
「え?なんで?まだ描いたことないんだから、いきなり決めつけるなんて良くないよー。那月くんならきっと…」
「……だから、描けないんだって。君には僕の気持ちはわかんない」
どうして何も知らない彼女は無責任にそう言うのだろうか。いつもなら底抜けに明るい太陽のような笑顔もこの時ばかりは少しムカついた。僕のことなんて、一ミリも知らないくせに、わかったこと言わないでよ。
そんな言葉が口からこぼれ出そうになり、すんでのところで残った理性がそれを止めた。
だけど我に帰った時、彼女を見るとその顔からは笑みが消え、瞳は僕に焦点を当て、大きく見開いていた。