「あ、那月くんだー!お昼ご飯もう食べた?良かったら一緒に食べよ!」
気づけば入学から一ヶ月経っていて、晴寧とは軽い冗談を言い合えるくらいの仲にはなっていた。そんな五月のある日、彼女は廊下から窓際に座る僕にそう言った。
当然ながら教室にいるのは僕だけじゃないし、クラスにいる人のほぼ全員が晴寧と僕を見た。
「えっ、目黒くん白石さんと友達なの…?」
「マジ?」
…あーあ、変な注目集めちゃった。せっかくの穏やかな昼休みだったのに。
僕は多少不機嫌になりながら彼女のもとへ歩いていく。
「…君さ、声でかすぎ。何?」
「いや、だからお昼ご飯!一緒にどうかなーって。もう食べた?」
「別に、僕、弁当とか持ってこないし。今日は抜こうと思ってた」
「え、ダメだよそんなの!だからこの前みたいに倒れるの!ほら、購買へレッツゴー!!」
彼女は僕の手を引いて購買の方へ走り出した。
「え、あ、ちょっ…待っ…」
彼女は僕の声も、注意する先生の声も耳に入らないという様子で進むことをやめなかった。
「白石ー、廊下は走るなー」
「ごめんなさーい!急いでるので!」
彼女につれてこられ、仕方なく購買で偶然残っていたメロンパンを一つだけ買う。彼女はといえば、弁当を持ってきているにも関わらず、さらにパンを二つも買っていた。