彼女は窓の外に目を向ける。
「それにさ、私も友達、できなかったんだよね。ほら、変なやつだし」
「まぁ、初対面でシカトされても話し続けるくらいだし。確かに」
「普通そこは『そんなことないよ』って言ってくれないのー?那月くんはドライだなぁ」
「知らないよ、そんなこと言ったって初対面だし」
「あはは」
開いた窓から入ってきた風が、彼女の長い髪を揺らした。
「だからさ、補色(ともだち)になってよ。お互いを鮮やかに照らしあえる関係」
「……別に、どっちでもいい」
「んじゃあ決まりね!あ、先生だ!入部届出してくる!」
こうして、僕と彼女、白石晴寧との不思議な、題して補色の関係(命名、晴寧)が始まった。
まさか、彼女との出会いが僕の世界に光をくれるなんて、思ってもみなかった。


今日も僕は描かなくちゃいけない。手を止めちゃいけない。僕の絵を待つ誰かのために、家族のために―—。
……あれ、僕は。なんで絵を描いてるんだっけ?

「―—くん、那…くん。……那月くん。あれ、死んでる?」
「…うわっ」
「あ、生きてた。良かったー」