こいつもか。勘違いもいいところだ。
「黒に、補色はない。黒は無彩色だから」
そう話しながら僕は目を細める。何だか自分のことを言っているみたいだった。
「……僕も、黒みたいだ。補色がいなくて」
僕は何を言っているんだろうか。思わず口から出た言葉に自分でも困惑する。
彼女は少し考えたあと、あ、と何かを思いついたように僕の方を見た。そして一言。
「ーー私が、君の補色になってあげるよ」
と。


「……は?」
「だから、私が君の補色(ともだち)になる、ってこと。部活も丁度同じだし、いいじゃん。よろしく!」
「君さ、僕の言ってることの意味分かってる?『補色がいない』なんて言ってて変なやつだと思わないの?」
僕がそう訊くと彼女は「ああ」と言って笑った。
「いや?回りくどい言い方するなぁとは思ったけど、つまり君は友達がいないってことでしょ?」
「どストレートに言うね、まぁ事実そうなんだけど」