いつかの日にふいていた春風はやがて止み、鬱陶しいほどに暑い夏がきて、秋がきた。
今日も僕は彼女、晴寧と一緒に線を描く、絵を描く。
開けた窓からはあの日とは違うものの、まだ生暖かい秋の風が舞い込んできていて、穏やかだった。
僕は少しだけ眠たくなり、筆を休めて机に突っ伏そうとした。その時。
尋常じゃないほどの走る足音と、乱れた息の音が聞こえた。かと思えば次の瞬間、眠気も吹き飛ぶくらいの衝撃で扉が開いた。
「うわっ!?先生どうしたんですか!そんな慌てて」
晴寧はビクッと肩を震わせ、扉の方を見る。僕も突っ伏したまま顔を横に向けると、扉の前にはおそらく職員室から走ってきたのであろう息を切らした先生が立っていた。
「め、目黒くん……」
先生はノートパソコンを取り出し、僕と晴寧が使っていた机の真ん中に置く。
“20××年度世界美術コンクール最終結果”とそこには記されていた。先生はわざとなのか、ゆっくりとページを焦らすようにスクロールしていく。
学生部門、金賞のところには___。
『黒の補色  目黒那月』
と。はっきりと記されていた。
あまりの唐突な結果に僕は大きく目を見開く。