僕は少し、風景画を描くのが得意だったみたいで、僕の描く風景画は気付けば不特定多数の多くの人々に愛されるまでになっていた。自分も、今でも正直なところ実感なんてなくて。
父さんも当然、笑顔で僕のことを褒めてくれると思っていた。そしてこれからもあの日のような日々が続くと思っていた。けど、真逆だった。
父さんは自分の才能のなさに苛まれ、画家を辞めた。そして僕が稼いだお金で生活するようになった。
それだけではない。ある日のことだった。
『父さん!どうかな?いつも風景画だから、たまにはこんなのも…』
その日、僕は次回発表する予定にしていた作品を完成させ、父さんに見せた。それは、母さんと父さんが温かく笑う、あの日の様子を描いた人物画だった。
きっと当時の僕に才能がなかったのもあるだろう。発表した後に『なんか違う』『下手すぎる』などと酷評があり、それ以来父さんは僕に風景画以外のものを描くことを制限した。
『お前もきっと同じだ。俺と一緒で才能なんてない、ただの凡才だ』
酷評に悩まされた僕に父さんが吐き捨てたあの言葉は、今でも深く心の奥深くに刺さってて、棘みたいに抜けない。
僕は、何のために、絵を描いてたんだろう。
家族の生活のため?評価のため?目黒那月としての名誉を守るため?
……違う。僕は好きだから、絵を描いていたんだ___。