あれ?ここ、保健室?なんでだろう。
「あら、起きた?もう、青山さんたら無理してたでしょ。体育で走ってたら倒れちゃったんだって?幸い、上手に倒れたみたいだから怪我はしてないけど。あ、親御さん呼んだから来るまで休んでて。」
「嫌です。帰りたくないです。あと給食食べてニ時間授業受けて部活行くだけなんで、大丈夫です。」
先生は最初は少し怒った顔をしていたが、私の話を聞いて、困ったような顔をする。困らせているのは分かるが、どうしても帰りたくない。明日は休みだし、大丈夫なのだ。
「大丈夫じゃないの。倒れるくらい体は疲れてる。体がもうダメって言ってるんだよ。だから今日はもう帰りなさい。これは譲れないわ。」
先生は、私の目をしっかり見て言った。これは勝てる気がしない。しょうがない、帰ろう。お母さんももう呼んだって言ってたし。
「分かりました。我儘言ってごめんなさい。」
「いいのよ。頑張り屋さんな証拠だもの。でも、今日と土日はしっかり休むこと。これは守ってね。そうだ、笹川さん、心配してたわよ。あと、上橋くんも。体育終わった時に二人で様子を見にきてくれたのよ。」
心七、上橋くん。嬉しいな、後でお礼言わなきゃ。うん?体育終わった時?
「そうなんですね。ありがたいです。あの、ちなみに今って何時ですか?」
先生は不思議そうにして、「12:50だけど。」と教えてくれた。嘘、私が倒れたのって、体育始まってすぐだよね。一時間くらい寝てたってこと?びっくりだ。最近寝れてなかったのに。
コンコン。
「失礼します。青山笑美の母です。」
あ、お母さん。先生とお母さんが話し始めた。
「お迎えありがとうございます。電話でもお話しましたが、体育で倒れてしまったようで。本人にも伝えましたが、今週末はしっかり休むようにして下さい。」
あら、お母さんにも言っちゃうんだ。部活休めって言われちゃうかな。でも行く。大事な時期だもん。
「分かりました。ありがとうございました。」
あ、私もお礼しないと。
「ありがとうございました。」
「いえいえ、お大事にしてください。」
ぺこっとして、お母さんと帰る。お母さんは心配そうだ。
「今日、朝から様子おかしかったし、休んだらよかったね。まさか倒れちゃうなんて。それに、まだ何かあるでしょ。」
え?どういうことだろう。それにおかしいって、言い方。まあ実際そうなのかもしれないけど。
「なんかあったんじゃないの?」
「えーっと、そう、吐いちゃったの!でもそのまま体育した、みたいな?」
お母さんは呆気にとられたように、口をパクパクさせた。そして、あちゃーと言うように、俯いておでこに手を当てる。
「何やってんの、笑美。無理はしないでって言ったじゃない。それに、お母さんが言ったのはそういうことじゃなくて。クラスで揉めたとか意地悪されたとかそういうのがないかってこと。」
知ってる。でも言いたくないんだもん。情け無いし。部活の先輩に嘘つかれたけど何も言い返せなかったとか。美空に八つ当たりしそうになったとか。先生に集中しなさいって怒られたとか。はあ、考えてて嫌になる。
「何にもないよ。大丈夫。」
「そう?」
お母さんはまだ納得していなさそうだ。でも言わない。今も心配かけてるのに、もっと心配かけちゃう。それに、ここでそれを言ったら吐いたって言ったことが無駄になっちゃう。心配を大きくしちゃうだけなら、言わない。
