「え?うそ。笑美ちゃん……。」
名前を呼ばれた気がして振り返ると、そこには帆乃先輩がいた。どういうことだろう。先輩は習い事に行ったんじゃなかったか。
「あ、帆乃先輩じゃないですかー。でも、どうしたんですか?笑美もなんかあった?二人とも様子がおかしいけど。」
心七が心配そうに見てくる。私は心七に大丈夫だよと言う思いを込めて笑顔を見せる。そして、帆乃先輩に向き直る。
「先輩、習い事だったんじゃないんですか?」
「えーっと……、実は、嘘だったの。ごめん。あの、姫野先生にはこのこと言わないでくれない?お願いっ。」
嘘?なにそれ、ひどい。ただでさえショックなのに、先生には秘密にって。更に追い討ちをかけるように、先輩の手には買い物でもらったであろう紙袋。なーんだ、へぇ。先輩は習い事と嘘をついた上に呑気にショッピングしてたんだ。よく考えてみると、ここはトナ◯エのすぐそばだ。きっと帰り道だろう。
「はい、分かりました。言いません。」
私は軽蔑の視線を向けながら言う。私にはこれが精一杯だ。先輩に文句を言うのは怖くてできない。でも先輩は怯まない。ニコッと笑って、「ありがとう。じゃあね。」と去って行った。
「ねぇ、笑美、何があったの?」
心七はまだ心配そう。だから、私は正直に言う。先輩は習い事があるからと言って20分やって帰って行ったこと。そして今、それが嘘だと分かったこと。心七はうんうんと聞いてくれた。そして、「先輩、図太い。」 と一言。
ここの分かれ道で心七とはバイバイだ。また明日と、別れる。疲れた。
