琴花と出会ったのは今年に入ってからだ。高校で初めて仲良くなったのが琴花だった。青山(あおやま)と朝野(あさの)で席が前後だったのが始まりで、話がよく合った。今では休みの日に会うほどの仲だ。買い物に行ったり勉強をしたりしている。部活は違って琴花は茶道部、私は写真部に入っている。どちらもゆるめで楽しくやっている。
 ちなみに琴花は美少女だ。色白の肌に色素が薄めのこげ茶の長髪が似合っている。私は黒髪なので少し憧れたりもする。それから童顔で、それがまた可愛い。身長も小柄なほうで一見中学生に見える。中学生も高校生も身長はそこまで変わらない気もするが。
私は大きめで、琴花にうらやましがられる。可愛らしくて似合っているのにな。百五十六センチにはなりたいそう。ちなみに今の琴花は百四十センチで、私は百六十センチある。  
 琴花は毎朝牛乳を飲んで毎夜ヨーグルトを食べているのだそう。外食で飲み物を頼むときも、大体牛乳入りのものを頼む。すごい努力だと思う。私は牛乳が苦手なので真似できない。それをいうと恨みがましい目で見られたが。それからは身長のことに触れないようにしている。
 琴花が茶道部に入っているのはおばあちゃんの影響だ。琴花のおばあちゃんは琴花と一緒に暮らしている。何度か会ったことがあるが、優しくて頼りがいのある方だった。なんとなく琴花に似ているような気がした。お父さんとお母さんは共働きで忙しいので、おばあちゃんといるときの方が多いそう。おばあちゃんとお茶をするのが大好きだ。私も一緒にさせてもらったことがある。お茶も和菓子もとてもおいしかった。お茶をたてる琴花は真剣で、ピンと伸びた姿勢や滑らかな動作がかっこよかった。
 私も茶道部を見学し、楽しそうだなと惹かれたが、やっぱり写真が好きなので写真部にした。特に空の写真を撮るのが好きだ。お姉ちゃんが一番喜んでくれたから。今でもたまにお姉ちゃんに写真を送る。送るとすぐにお手紙を書いてくれるのが嬉しい。空以外にも動物や植物なども撮る。もちろん人も撮る。写真は思い出と残るし、大事なことに気付ける。しかも美しい。写真の魅力に気付いたのはお姉ちゃんのおかげだ。
 お姉ちゃんは今歌手として活躍している。お姉ちゃんの友達の心七(みな)ちゃんとアーティストをしているのだ。Eminaというグループだ。お姉ちゃんが歌を、心七ちゃんがピアノをしている。お姉ちゃんは昔から歌が大好きだったし上手かった。心七ちゃんは幼稚園の頃からのピアノをやっているんだそう。二人の曲は素晴らしい。綺麗で優しくて繊細で心にささる。
お姉ちゃんは私の自慢だ。優しくてかっこいい。私も人を笑顔にできるような人になりたい。お姉ちゃんが東京に行ってしまったのは寂しいが、それだけ頑張っているということだし我慢している。ライブには毎回欠かさず家族みんな行っている。平日だったらお母さん達は有休をとり、私はずる休みしている。休日のときは琴花と行くときもある。琴花は元からお姉ちゃんのファンだった。私のお姉ちゃんだと知ったときは、すごく驚いていたし興奮していた。
 そのぐらいお姉ちゃんはすごい。私も偉大な人になれたらいいな。それをお姉ちゃんに言ったら人はみんな偉大だと言われるだろうけど。