待ちに待った結婚式の日が来た。前日の金曜日の夜、僕は会社から早めに帰って、菜々恵に電話して準備の状況を確認した。それから僕は夜遅くまで寝室、リビング、お風呂、キッチンの掃除をした。洗濯もしておいた。旅行の支度を終えて、寝たのは12時を過ぎていた。
目覚ましをかけておいた。でないと寝坊していただろう。目覚ましの音にぼんやりしていたが、気が付いて跳び起きた。パンと牛乳で朝食を簡単に済ませるとキャリイバッグを引いてマンションを出た。さすがにリュックは止めにした。
新婚旅行先はと言うと、菜々恵がどうしてもと言うので、二人だけの同窓会をした同じホテル、同じ部屋を1泊予約してある。ただ、長い旅行は不要と菜々恵は言った。僕も彼女に負担をかけたくないので賛成した。もう今日からはいつも一緒に居られる。
会場へは9時少し前には到着した。式の1時間前に着いて準備しなければならない。菜々恵はというと母親と少し前に到着してもう着替えていると聞いた。
僕はすぐに着替えてから控室に行った。両親と弟がすでに到着していた。ほどなく松本部長夫妻が到着したので、両親に紹介した。
それから菜々恵が母親に付き添われて控室に挨拶に来た。ウエディングドレスの菜々恵は本当に綺麗で輝いて見えた。
両方の母親は旧知の仲だったので、僕の両親は事前に菜々恵の実家を訪問して母親に会って挨拶は済ませていた。
式が進んでいく。誓いの言葉が忘れられない。
「病めるときも健やかなるときも田村菜々恵さんを愛することを誓いますか?」
僕はゆっくりと「誓います」と言った。菜々恵もまたはっきりと力強く「誓います」と言うのが聞こえた。
僕は緊張していたのだろう。記念写真を撮り終えると、どっと疲れを感じた。菜々恵もきっとそうだろう。
僕は着替えをしてロビーの両家の家族と松本夫妻のところへ行った。これから会食を始める。菜々恵が着替えて姿を見せた。旅行へ出かける半袖のベージュの清楚なワンピースに身を包んでいる。
会食が始まった。席次は僕たちが中央で僕の右隣に松本部長、その隣に僕の父親、そのとなりに弟、菜々恵の左隣に松本部長の奥様、その隣に菜々恵の母親、その隣に僕の母親、その隣に菜々恵の妹の順で座った。
合計9名の少人数なので丸テーブルにした。弟の健二は菜々恵の妹の由紀恵さんと隣同士になっている。由紀恵さんは菜々恵に似て可愛い美人だった。まだ独身と聞いて独身の健二はもう話しかけている。あいつはシャイな兄とは違って小学校に通っていたころから女の子には何の抵抗もなく話かけることができていた。
松本部長に挨拶を頼むのは気が引けたので乾杯の発声をお願いして、僕が簡単に挨拶をした。
「今日は僕たちの結婚を祝っていただきありがとうございました。松本部長ご夫妻には離れ離れになっていた僕たち二人をお引き合わせいただき心より御礼申し上げます。僕たちは中学3年生の時に巡り合い、彼女のがんがきっかけで再会して、お互いに好きだったことが分かりました。でもそれゆえに二人はまた別の道を歩み始めてしまいましたが、神様がまた二人を巡り合わせてくださいました。この運命に導かれて、これから死が二人を分かつまで精一杯生きて行こうと今日誓い合いました。どうかこれからも僕たち二人を優しく見守っていただきたく心よりお願い申し上げます」
立っていた僕たち二人は深々と頭を下げた。皆拍手をしてくれた。それから松本部長に乾杯のご発声をお願いした。
「井上君、菜々恵さん、ご結婚おめでとうございます。私たちの紹介でお二人が運命の再会を果たし結ばれたことに驚いておりました。実は私たちもまた運命の再会を果たして結婚したからです。結ばれる二人は運命の赤い糸で繋がっていると申しますが、二人の再会と結婚を目の当たりして、私たちもその思いを新たにしたところです。どうか二人が悔いのない結婚生活を送られることを願ってやみません。では二人のご健康とご多幸を祈念して、乾杯!」
運命の赤い糸か! 僕と菜々恵はその赤い糸で繋がっていた。そう信じるしかない。その糸を大切にして切れないようにしなければならない。それは毎日毎日を二人で精一杯生きるしかない。
会食は和やかなうちに終わった。健二と由紀恵さんはどうだろう。馬が合うように話してはいたが。
松本夫妻をタクシーで見送ってから、家族と別れて、僕たちはスーツケースを引きずりながら東京駅へ向かった。ここから新幹線で小田原へ、小田原から箱根登山鉄道で強羅へと二人だけの同窓会の経路をたどることにしている。
まだ9月半ばだから、紅葉はまだまだだろう。菜々恵が寄り掛かってくる。その腕の感触があのころを思い出させてくれる。
目覚ましをかけておいた。でないと寝坊していただろう。目覚ましの音にぼんやりしていたが、気が付いて跳び起きた。パンと牛乳で朝食を簡単に済ませるとキャリイバッグを引いてマンションを出た。さすがにリュックは止めにした。
新婚旅行先はと言うと、菜々恵がどうしてもと言うので、二人だけの同窓会をした同じホテル、同じ部屋を1泊予約してある。ただ、長い旅行は不要と菜々恵は言った。僕も彼女に負担をかけたくないので賛成した。もう今日からはいつも一緒に居られる。
会場へは9時少し前には到着した。式の1時間前に着いて準備しなければならない。菜々恵はというと母親と少し前に到着してもう着替えていると聞いた。
僕はすぐに着替えてから控室に行った。両親と弟がすでに到着していた。ほどなく松本部長夫妻が到着したので、両親に紹介した。
それから菜々恵が母親に付き添われて控室に挨拶に来た。ウエディングドレスの菜々恵は本当に綺麗で輝いて見えた。
両方の母親は旧知の仲だったので、僕の両親は事前に菜々恵の実家を訪問して母親に会って挨拶は済ませていた。
式が進んでいく。誓いの言葉が忘れられない。
「病めるときも健やかなるときも田村菜々恵さんを愛することを誓いますか?」
僕はゆっくりと「誓います」と言った。菜々恵もまたはっきりと力強く「誓います」と言うのが聞こえた。
僕は緊張していたのだろう。記念写真を撮り終えると、どっと疲れを感じた。菜々恵もきっとそうだろう。
僕は着替えをしてロビーの両家の家族と松本夫妻のところへ行った。これから会食を始める。菜々恵が着替えて姿を見せた。旅行へ出かける半袖のベージュの清楚なワンピースに身を包んでいる。
会食が始まった。席次は僕たちが中央で僕の右隣に松本部長、その隣に僕の父親、そのとなりに弟、菜々恵の左隣に松本部長の奥様、その隣に菜々恵の母親、その隣に僕の母親、その隣に菜々恵の妹の順で座った。
合計9名の少人数なので丸テーブルにした。弟の健二は菜々恵の妹の由紀恵さんと隣同士になっている。由紀恵さんは菜々恵に似て可愛い美人だった。まだ独身と聞いて独身の健二はもう話しかけている。あいつはシャイな兄とは違って小学校に通っていたころから女の子には何の抵抗もなく話かけることができていた。
松本部長に挨拶を頼むのは気が引けたので乾杯の発声をお願いして、僕が簡単に挨拶をした。
「今日は僕たちの結婚を祝っていただきありがとうございました。松本部長ご夫妻には離れ離れになっていた僕たち二人をお引き合わせいただき心より御礼申し上げます。僕たちは中学3年生の時に巡り合い、彼女のがんがきっかけで再会して、お互いに好きだったことが分かりました。でもそれゆえに二人はまた別の道を歩み始めてしまいましたが、神様がまた二人を巡り合わせてくださいました。この運命に導かれて、これから死が二人を分かつまで精一杯生きて行こうと今日誓い合いました。どうかこれからも僕たち二人を優しく見守っていただきたく心よりお願い申し上げます」
立っていた僕たち二人は深々と頭を下げた。皆拍手をしてくれた。それから松本部長に乾杯のご発声をお願いした。
「井上君、菜々恵さん、ご結婚おめでとうございます。私たちの紹介でお二人が運命の再会を果たし結ばれたことに驚いておりました。実は私たちもまた運命の再会を果たして結婚したからです。結ばれる二人は運命の赤い糸で繋がっていると申しますが、二人の再会と結婚を目の当たりして、私たちもその思いを新たにしたところです。どうか二人が悔いのない結婚生活を送られることを願ってやみません。では二人のご健康とご多幸を祈念して、乾杯!」
運命の赤い糸か! 僕と菜々恵はその赤い糸で繋がっていた。そう信じるしかない。その糸を大切にして切れないようにしなければならない。それは毎日毎日を二人で精一杯生きるしかない。
会食は和やかなうちに終わった。健二と由紀恵さんはどうだろう。馬が合うように話してはいたが。
松本夫妻をタクシーで見送ってから、家族と別れて、僕たちはスーツケースを引きずりながら東京駅へ向かった。ここから新幹線で小田原へ、小田原から箱根登山鉄道で強羅へと二人だけの同窓会の経路をたどることにしている。
まだ9月半ばだから、紅葉はまだまだだろう。菜々恵が寄り掛かってくる。その腕の感触があのころを思い出させてくれる。