朝8時30分に僕は頼んであった見送りのためのリムジンに乗ってホテルに到着した。ロビーではチェックアウトした二人がスーツケースを持って待っていた。すぐにリムジンに乗り込んで空港へ向かう。フライトは12時だから十分すぎるほど時間はある。
道路の渋滞もなく予定の時間に空港へ着いた。すぐにチェックインしてスーツケースを預けてもらった。これで後は手荷物チェックを受けて搭乗ゲートに入るだけだ。これで紗奈恵とは帰国するまでは会えない。まあ、これからもスカイプで会話できるから良しとしよう。
「ありがとう、市瀬君、お世話になりました。とっても楽しい思い出ができました」
「池内さんに誘ってもらって、本当に来てよかった。市瀬君ともお話ができて」
「どうか、お元気でいてください」
「ああ、また連絡するから。家に着いたら無事着いたと連絡を入れてほしい」
紗奈恵は頷いたが何も言わなかった。
「もう、入った方がいい。デューティーフリーでお土産を買う時間が足りなくなるから」
二人はゲートを入って行った。僕は搭乗時間まではゲートの前にいた。帰りはバスで帰ることにしてリムジンは返した。時間は十分にある。今日は土曜日だ。
紗奈恵は8日間ニューヨークに滞在して帰っていった。会って話したいことがたくさんあったはずなのにほとんど何も話していなかった。大森さんがいたからかもしれないが、二人で話す機会は作れば作れたはずなのにそれができなかった、いやしなかった。話してもありきたりの無難な話に終始した。
中学校から高校、大学へと進む間もそうだった。好きだとか付き合ってほしいとは言わなかった。お互いに好意は持っているが、なんとなく、着かず離れずの関係だった。今に至っても二人ともそれが全く変わっていなかった。
なんとかしたいが、なんとしようもない。相手のいることだ。でもこれは僕に勇気がないだけかもしれない。
◆◆◆
日曜日の朝9時過ぎになってようやく紗奈恵から無事に帰ったとスカイプで連絡が入った。家に到着したばかりで、服装もニューヨークを立った時と同じだった。旅の疲れが見て取れた。
「旅行の手配から何か何までありがとう。本当に楽しい旅行で良い思い出になりました」
「無事について、ほっとしている。楽しかったと言ってもらえて本当によかった。誘ったかいがあった。僕も楽しかった。これからもスカイプで話をしよう」
「それなら大森さんと話してあげて、彼女はあなたに好意を持っているから、そうしてあげて、彼女を誘ったのも、彼女のあなたへの気持ちが分かったからよ」
「でも、あの時に彼女に伝えたとおり、僕は今そんな気持ちになれないから」
「お願いね。じゃあ、ありがとう。本当にありがとう。さようなら」
紗奈恵からスカイプを終えた。紗奈恵の気持ちが分からなかった。僕の気持ちを分かってくれていないのか? 大森さんに言った「僕は今そんな気持ちになれないから」が余計だった? 最後の言葉「さようなら」が気になった。
◆◆◆
1週間後の定時にスカイプの連絡を入れた。でも紗奈恵は出てくれなかった。何かアプリの不具合でもあったのだと思って次の週も入れた。やはり紗奈恵は出なかった。次の週も出てくれなかった。
これが紗奈恵の意思だと思うと、もうそれ以上は連絡を入れることをあきらめた。空港での別れが別れの始まりだった。そして帰宅後のスカイプが最後の会話になった。
もちろん、僕は大森さんには連絡を入れなかった。それに彼女からも何も言ってはこなかった。大森さんには僕の気持ちが分かっていたのだと思う。
道路の渋滞もなく予定の時間に空港へ着いた。すぐにチェックインしてスーツケースを預けてもらった。これで後は手荷物チェックを受けて搭乗ゲートに入るだけだ。これで紗奈恵とは帰国するまでは会えない。まあ、これからもスカイプで会話できるから良しとしよう。
「ありがとう、市瀬君、お世話になりました。とっても楽しい思い出ができました」
「池内さんに誘ってもらって、本当に来てよかった。市瀬君ともお話ができて」
「どうか、お元気でいてください」
「ああ、また連絡するから。家に着いたら無事着いたと連絡を入れてほしい」
紗奈恵は頷いたが何も言わなかった。
「もう、入った方がいい。デューティーフリーでお土産を買う時間が足りなくなるから」
二人はゲートを入って行った。僕は搭乗時間まではゲートの前にいた。帰りはバスで帰ることにしてリムジンは返した。時間は十分にある。今日は土曜日だ。
紗奈恵は8日間ニューヨークに滞在して帰っていった。会って話したいことがたくさんあったはずなのにほとんど何も話していなかった。大森さんがいたからかもしれないが、二人で話す機会は作れば作れたはずなのにそれができなかった、いやしなかった。話してもありきたりの無難な話に終始した。
中学校から高校、大学へと進む間もそうだった。好きだとか付き合ってほしいとは言わなかった。お互いに好意は持っているが、なんとなく、着かず離れずの関係だった。今に至っても二人ともそれが全く変わっていなかった。
なんとかしたいが、なんとしようもない。相手のいることだ。でもこれは僕に勇気がないだけかもしれない。
◆◆◆
日曜日の朝9時過ぎになってようやく紗奈恵から無事に帰ったとスカイプで連絡が入った。家に到着したばかりで、服装もニューヨークを立った時と同じだった。旅の疲れが見て取れた。
「旅行の手配から何か何までありがとう。本当に楽しい旅行で良い思い出になりました」
「無事について、ほっとしている。楽しかったと言ってもらえて本当によかった。誘ったかいがあった。僕も楽しかった。これからもスカイプで話をしよう」
「それなら大森さんと話してあげて、彼女はあなたに好意を持っているから、そうしてあげて、彼女を誘ったのも、彼女のあなたへの気持ちが分かったからよ」
「でも、あの時に彼女に伝えたとおり、僕は今そんな気持ちになれないから」
「お願いね。じゃあ、ありがとう。本当にありがとう。さようなら」
紗奈恵からスカイプを終えた。紗奈恵の気持ちが分からなかった。僕の気持ちを分かってくれていないのか? 大森さんに言った「僕は今そんな気持ちになれないから」が余計だった? 最後の言葉「さようなら」が気になった。
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1週間後の定時にスカイプの連絡を入れた。でも紗奈恵は出てくれなかった。何かアプリの不具合でもあったのだと思って次の週も入れた。やはり紗奈恵は出なかった。次の週も出てくれなかった。
これが紗奈恵の意思だと思うと、もうそれ以上は連絡を入れることをあきらめた。空港での別れが別れの始まりだった。そして帰宅後のスカイプが最後の会話になった。
もちろん、僕は大森さんには連絡を入れなかった。それに彼女からも何も言ってはこなかった。大森さんには僕の気持ちが分かっていたのだと思う。