いつでも、何かが始まるのはこの季節から。

季節は巡り、また新しい季節、新しい環境、新しい仲間に囲まれて
                      いつの間にか、また新しいスタートラインに立っている。

いつも、同じスタートラインに立っているはずの自分が
             いつの間にか周りの子達に追い越され、上手くスタートを切れずにいる。

そんな不安を、雲一つない青空はかき消してくれる。

(まるで、何もかもを見透かしているみたい…)

これから起こることをわかっているかのような青空が恨めしい。

上手くいくわけない。

一度だって、この季節から成功したことなんてないのだから…

どんなに頑張ったって、結局みんな…

「ねえ、茜空って何かスポーツやってた?
               初めて会った気がしなくてさ」

後ろから小声で凛海が聞いてきた。

「一応、小学生の時からバレーやってるけど…」

そう答えると、凛海は「やっぱり?!見たことあると思ったら、そういうことか」

凛海は1人で納得したように呟いては

「実は、自分も小学生からバレーやってたんだよ!やってたんだよ!
                    え、ポジションってリベロだったでしょ、?」

と、きらきらさせた瞳でさらに話しかけてくる。「え、うん。よく覚えてるね、小学生のことなんて」

先生の話を右から左に流しながらも、凛海の話に耳を傾ける。

リベロというポジションは、特別だ。
あまり目立たないし、周りから見たらバレーでは小さい人がやるような
ポジションというイメージが強いかもしれない。

スパイクも打てなければ、サーブも打てない。

守るべきルールが多く、スパイクを打てる人がヒーロー的存在だとしたら
リベロはそれを支える、縁の下の力持ち的な地味な存在かもしれない。

けれど、自分はその誰かを支えてあげるような、影のヒーロー的役割に

『憧れた』

どんなに地味でも、頑張って、努力していれば…

きっと誰か一人にくらいは、自分の存在に気付いてもらえるだろうと信じていた。

何より、小さくても戦えるのだと証明したかった。

 そんなことを考えていると、いつの間にか担任の連絡事項は終わっており
係を決めるという話に切り替わっていた。

自分のクラスには、部活動生が多く集まっている。
級長という、目立つような係はすぐ決まるだろうと思っていた。
しかし、男子1名、女子1名という決まりらしく
男子はすぐに決まっても、女子はそんな簡単には決まらなかった。

5人で話し合った結果、陽葵が「私がやるよ」と名乗り出てくれた。

係が決まった後は特にやることもなく、自由時間となった。