春。まだ少しだけ冷たい空気が残っているものの、どこかいつもと違う雰囲気があるのは新しい制服にそでを通し、
三月まで通っていた通学路とは違う道を緊張したような面持ちで歩いている新入生達がいるからだろうか。
桜が咲き誇り、優しい日差しが新入生を迎え入れてくれるこの季節。

私、紅野茜空(くれのあかね)
この春から桜咲高校の2年。

桜咲高校は名前の通り、この季節になると学校の周りにある桜の木達が、ずっと待ち構えていたかのように
一斉に花を咲かせる。
この学校はそんなに古くはなく、私達でちょうど50期生なのだそう。

 家からバスで10分、バスを降りて少し歩いたところで正門が見えてきた。
やはりというべきか、正門はとても混雑していた。
正門に入るとすぐに見えてくるのが体育館であり、新しいクラス掲示がされている場所でもあるのだ。

(自分のクラスは…あった、1組か。やっぱ、知らない人だらけだな)

 中に入ると、それぞれが自分のやりたいことをやっている。
しかし、教室の中には男子しかまだ来ていないのか、女子の姿は見当たらない。
男子と女子の人数までは確認していなかったため、とりあえず誰か女子が来るまで小説を読もうと座席表を確認し
自分の席に着いた。

 HRが始まるまであと5分というところで、3人組の女子が入ってきた。
何かがおかしいと思い、もう一度名前の書かれている座席表を確認してみる。

(これは…、何かの間違いとかじゃないよね?)

女子の名前と思われるものが、5つしか載っていないのだ。

 確か、1年生の後半に何かのアンケート調査を受けた記憶はあるが、まさかクラス分けに関係しているとは
微塵も考えていなかった。

女子がたったの5人しかいないとは…