(幸来なにしてんだろ。LINEも既読にならない。ライブ配信も音沙汰なく3日も休んでる。今までそんなことなかったのにな…)
 そんなことを思いながら、幸来の家のチャイムを鳴らす。
 『ピンポーン』
 (なんの音もしない)
 「幸来?いないの?開けるよ?」
 私たちはお互いの家に自由に出入りできるようにお互いの家の合鍵を持っている。なにかあったときのためだ。

 『ガチャ』
 「幸来?詩音(しおん)だけど…」
電気もついていない部屋に話しかけるも応答はもちろんない。
電気をつけようと手探りで歩いていると、足になにかあたった。慌ててスマホの懐中電灯をつけると、私の足に当たったのは人の足だった。
慌てて飛び上がったはずみで、手がどこかに当たったのか、部屋が明るくなった。私が誰かの足と思った足は幸来の足で、そこには変わり果てた姿の幸来がいた。
座っているだけなのに、私はなぜか冷静に、もう息をしていないと思った。そして冷静に110番に電話をかけた。

「んで?あなたはなぜこちらのおうちに来たのですか?」
「何度も話したのですが…LINEに返信がなくて。いや、返信がないことは…たまにあるんですけど。それで、幸来はライバーとしても仕事をしていたんですけど、予定があったり残業とかで配信できないときは、できないって連絡あるんですよ。それがないまま3日も配信も休んでて。気になって。元気ならそれでいいと思ったし、風邪とかでダウンしてるなら看病しないと、と思って…」
「それで?合鍵で鍵をあけたら、死んでいた、と?」
「はい」
私はとても冷静だった。まるで幸来が死ぬのを知っていたかのように、冷静に警察に通報し、律儀に大家さんにも連絡をした。そして警察からの事情聴取を何度も受けた。
「まぁ、きちんと遺書もあることですし、自殺で間違いないでしょう」
そう言って警察の方々が引き揚げようと動き出した。
「すいません。遺書があったんですか?」
「えぇ。こちらに。あ、あなたが第一発見者ですか。じゃあこれも」
そう言って、二枚の紙と4通の封筒を渡して警察の大群は退散していった。