そこに立っていたのは、制服に白衣を羽織った男子だった。
スッと脚は長く、中学のころにバスケをやっていた藍染よりも背が高い。ぱっちりした二重瞼の下には形の整った瞳が黄金比と言わんばかりに収まっていて、黒縁のメガネが知性を感じさせる。彼は、私と目が合うとにっこりと柔和な笑みを浮かべた。
「綺麗なお兄さん……」
「え?! 星紗ちゃん!?」
恍惚と呟く私を見て、藍染が慌てた声を出す。
「うわ、やばい! 化学部部長の円城寺さんだ!」
教室の中の女子たちが一斉に席を立って、ドアの近くに駆け寄ってくる。
円城寺。そういえばいつだったか三年にめっちゃカッコいい人がいるとか話題になってた気がするけど……。
「あの、これは、あなたが?」
私は持っていたバスボムを見せる。
「そうだよ。それは僕が作ったんだ」
「えっ!? 作ったんだ、すごい。てっきり市販品かと」
「ふふ」
手放しで褒める藍染に、円城寺さんは、ちょっとはにかんで笑った。
「あ、あのでも、何でこれを私たちに?」
私は首をかしげた。
円城寺さんとは今まで一度も話したこともない。廊下ですれちがったことすらなかった気がする。
こんなものをもらう筋合いはないはず。
「私たち、円城寺さんに何かしましたっけ? 何かのお礼とか?」
「うーん、そういうわけじゃないんだ」
「……?」
「君たちのことが好きだからだよ」
一瞬、場に静寂が落ちた。さっきまでドアに張り付いてきゃあきゃあと円城寺さんを見ていた女子たちまでもがシンとなっている。
私と藍染はポカンとなった。
「……えっと、それはその、ファンとか、推し、みたいな感じの意味で?」
こわごわと藍染が訊いた。
「いいや、恋愛的な意味だよ」
首を左右に振って、彼は確かにそう告げる。
……ん?
「僕は、白瀬さんと藍染くん二人のことが恋愛的な意味で好きなんだ。どちらか一人なんて選べないし……、そもそも藍染くんと白瀬さんはつきあっているよね? そんな仲睦まじい二人をむりやり別れさせて二人に悲しい思いをさせたいわけでもない。僕が好きなのは常にニコイチの二人だからね」
「えっと……つまり?」
私が尋ねれば、一呼吸おいて、円城寺さんは言った。
「藍染くんと白瀬さんと、僕の三人でつきあわない?」
水を打ったように辺りが静まり返り、やがて女子たちの絶望の絶叫が廊下に轟く。
スッと脚は長く、中学のころにバスケをやっていた藍染よりも背が高い。ぱっちりした二重瞼の下には形の整った瞳が黄金比と言わんばかりに収まっていて、黒縁のメガネが知性を感じさせる。彼は、私と目が合うとにっこりと柔和な笑みを浮かべた。
「綺麗なお兄さん……」
「え?! 星紗ちゃん!?」
恍惚と呟く私を見て、藍染が慌てた声を出す。
「うわ、やばい! 化学部部長の円城寺さんだ!」
教室の中の女子たちが一斉に席を立って、ドアの近くに駆け寄ってくる。
円城寺。そういえばいつだったか三年にめっちゃカッコいい人がいるとか話題になってた気がするけど……。
「あの、これは、あなたが?」
私は持っていたバスボムを見せる。
「そうだよ。それは僕が作ったんだ」
「えっ!? 作ったんだ、すごい。てっきり市販品かと」
「ふふ」
手放しで褒める藍染に、円城寺さんは、ちょっとはにかんで笑った。
「あ、あのでも、何でこれを私たちに?」
私は首をかしげた。
円城寺さんとは今まで一度も話したこともない。廊下ですれちがったことすらなかった気がする。
こんなものをもらう筋合いはないはず。
「私たち、円城寺さんに何かしましたっけ? 何かのお礼とか?」
「うーん、そういうわけじゃないんだ」
「……?」
「君たちのことが好きだからだよ」
一瞬、場に静寂が落ちた。さっきまでドアに張り付いてきゃあきゃあと円城寺さんを見ていた女子たちまでもがシンとなっている。
私と藍染はポカンとなった。
「……えっと、それはその、ファンとか、推し、みたいな感じの意味で?」
こわごわと藍染が訊いた。
「いいや、恋愛的な意味だよ」
首を左右に振って、彼は確かにそう告げる。
……ん?
「僕は、白瀬さんと藍染くん二人のことが恋愛的な意味で好きなんだ。どちらか一人なんて選べないし……、そもそも藍染くんと白瀬さんはつきあっているよね? そんな仲睦まじい二人をむりやり別れさせて二人に悲しい思いをさせたいわけでもない。僕が好きなのは常にニコイチの二人だからね」
「えっと……つまり?」
私が尋ねれば、一呼吸おいて、円城寺さんは言った。
「藍染くんと白瀬さんと、僕の三人でつきあわない?」
水を打ったように辺りが静まり返り、やがて女子たちの絶望の絶叫が廊下に轟く。