私の両親にも許可はもらっている。
……だけど。
さすがに言えなかった。
男子の家でお世話になるとは。
それから。
もう一つ決まったことが。
それは。
龍輝くんが転校する、近いうちに。
私が通っている学校に。
私と龍輝くん。
二人とも同じ学校。
その方が。
安心、少しでも。
私のことを守ることも。
入れ替わってしまったときも。
龍輝くんは。
考えてくれている、いろいろと。
そんな龍輝くんの心遣い。
感謝の気持ちでいっぱい。
ついに。
来た、この日が。
「神賀龍輝です。
よろしくお願いします」
転校して来た、龍輝くんが。
私が通っている学校に。
しかもっ。
同じクラスっ。
龍輝くんと同じ教室で学校生活を送る。
それは。
照れくさい、少しだけ。
そう感じていると。
クラスメートたちの騒ぎ声が耳に入ってきた。
黄色い声を上げている女子たち。
ざわざわしている男子たち。
そんなクラスメートたちの様子を見て思った。
やっぱり。
龍輝くんは人目を引く容姿とオーラがある。
「茉蕗、
改めてよろしくな」
あ。
シンとした、教室内が。
龍輝くんの一言で。
そしてっ。
一斉に見たっ、私のことをっ。
「茉蕗ちゃんっ、
神賀くんと知り合いなのっ⁉」
質問攻め。
その内容が一番多い。
巻き込まれている、質問攻めの嵐に。
そんなとき。
歩いてくる、龍輝くんが。
席に着くために。
そうしたら。
再びシンとなった。
やっぱり。
龍輝くんの存在感と威圧感。
それらは群を抜いている。
……さすが『白龍』の総長。
* * *
「それにしても
茉蕗が神賀くんと知り合いだったとはねぇ」
「神賀?」
「今日、転校生が来てさ、
すっごいイケメンなんだよね」
「そういえば、
私らのクラスでも騒ぎになってたわ、
『ものすごいイケメンが転校して来た』って」
「それでさ、
その神賀くんと茉蕗が知り合いみたいで」
昼休み。
今、屋上で昼食を食べている。
帆夏ちゃんと南穂ちゃん。
それから《ピンク・ラビット》のメンバーで。
今の会話は。
帆夏ちゃんと斐涼楓さん。
二人でされていたもの。
「神賀って、
下の名前は何ていうんだ」
「龍輝くんだったかな」
「神賀龍輝……
その名前、どこかで聞いたことがあるような……」
涼楓さん?
知っているの? 龍輝くんのことを。
「もしかしたら
あいつが知ってるかも。
訊いてみるか」
涼楓さんはスマートフォンを取り出した。
「誰に送ってるの?」
「彼氏」
涼楓さんの彼氏さん。
暴走族の総長、なんだよね?
あくまでも噂だけど。
ということは。
知っているだろうか、龍輝くんのこと。
「来た、返信」
涼楓さんのスマートフォンに返信。
「彼氏、やっぱり知ってた。
神賀龍輝のこと」
やっぱり知り合い?
龍輝くんと涼楓さんの彼氏さん。
「神賀龍輝は、
こっちに転校して来る前、
彼氏と同じ高校だったんだって」
なるほど。
そうだったんだね。
「それにしても
涼楓っちに彼氏がいるとは」
「なんだよ、帆夏っち、
そんなに不思議なことか?
男たちが私のことを相手にしないわけないだろ」
「ねぇねぇ、
涼楓っちの彼氏、見たい。
画像とかないの?」
「なんだよ、南穂っち、
そんなに見たいのか。
今日は特別だからな」
彼氏さん。
どんな感じの人だろう。
「こいつが私の彼氏」
「涼楓っちの彼氏、
涼楓っちと真逆じゃん」
帆夏ちゃんの言う通り。
涼楓さんの彼氏さんは。
静かなイメージがある。
「真逆の二人なのに
どうやって知り合ったの?」
「告白は?
どっちからしたの?」
帆夏ちゃんと南穂ちゃんは興味津々。
「幼なじみだよ。
告白は彼氏から。
中学の卒業式のときにな」
涼楓さんの彼氏さん。
暴走族の総長ではない感じ。
ただの噂だった。