傘をくれた君
            佐藤清美

学校から帰る時間だった。雨が降っていた。僕は傘がなく帰ろうとした時、新しい

新しいビニール傘と普通の傘を持っていた君が1つのビニール傘をサッと渡してく

れた。

それからその傘を返そうと思い、オレンジ色のテープを貼って置き傘にしておいた。

その置き傘は天気を気にしなかった。僕は何度もその傘を使ってしまい、古くなった。

けれど、君は何もなかった様に過ごしている。

その傘が古くなったから新しいビニール傘を買った。

数か月が過ぎて君は遠いところに引っ越してしまった。

その後になって僕は気付いた。

ビニール傘ではなく、新しく普通の傘を買うこと、と。

そして、いつも天気を分かるようになるという事、と。

返さなくても気付くのが遅かった。

あの時の若い頃、を思い出させる、ある雨の出来事だった。