咲花は風呂場に直行するとシャワーを浴びた。湯船につかりながら、ぼんやりと今日の出来事を振り返る。
咲花はスマホを取り出すと、動画サイトにアクセスした。
咲花は投稿されたばかりの新着動画を見た。
再生数は1000以下。
咲花のチャンネル登録者数は1万5千人だ。動画は3分弱の短いもので、タイトルは《あなたも出来る、簡単な自己紹介》とある。
そのサムネイルはどこかで見たことがある。
咲花はじっくりと眺めた。
それは自分が作ったものだ。
しかし、中身は全く違う。画面には自分と全く同じ姿の女性が映っている。声もそっくりだ。
服装まで一緒だ。
「あれ、ちょっと待って」
咲花は思わず口に出すと、慌てて浴室から出た。
「何でここに居るの」
彼女は咲花に尋ねる。しかし返事はない。代わりにスマホから女性の声が響く。
「……だってぇ、ここが一番安全だから」
「安全なの?」
「そうよぉ、もう何も心配ないわぁ」
「でも……」
咲花には心当たりがあった。「あなたは誰?」
「私はあなたの味方よぉ」
「どうしてここにいるの?」
「だってぇ、ここは私の家だもの」
「えっ、そうなの?」
「そうよぉ」
「そうなんだ……」
咲花はすっかり納得してしまった。彼女は自分の姿をしているけれど、どうにも胡散臭いと思ったが、そんなことを言って彼女を悲しませたくなかった。そもそも自分はそんなに器用じゃない、彼女は自分に嘘をつけないだろうかと考えた。
それに彼女はとても優しいし、自分を大事にしてくれるような気がしたからだ。
それからというモノ、咲花の仕事は順調だった。
彼女から教えてもらった通りにやると面白いほど稼げるのだ。
その方法は単純明快だった。まず、その日最初に投稿する内容を考える。その次に、そのネタでどんな話をするかを、その日に思いついた事として文章にする。そしてそのあと、動画を撮って編集する。それだけだった。
例えば今日なら、昨晩、家族で夕食を取った時の出来事だ。
その時に食べたのは、野菜を炒めたもので、それが美味しかったと咲花は話した。
しかし、それだけでは味気ないので、彼女はもっと詳しく料理について語った。
それを文字にしてまとめる。最後に、映像も交えて紹介する。その作業をすればする程、動画の再生回数が増えていく。もちろん、ただ紹介しただけで増え続ける訳ではない。しかし、どんなに時間がかかっても、毎日少しずつ増え続けた。
咲花は一心不乱に作業に取り組んだ。
咲花はその動画で生計を立てられるようになった。仕事の依頼が殺到している。しかも咲花が仕事をするのは決まって夜だ。つまり、その時間に多くのユーザーが見てくれる。咲花はそれを理解した上で、動画を投稿した。
「みなさんこんにちは。今夜は、最近話題になっているあの食べ物について解説したいと思います」
画面が切り替わると、そこには咲花が居た。
「まずはこちらの商品です」
「こちらはですね、コンビニのおにぎりなんですけど、具にチーズが入っているんですね」
「それで食べてみると、これがびっくりするほど美味しいんですよ」
「えー、信じられませんよね」
「本当ですよ」
「それじゃあ、試してみましょう」
そう言うと、咲花はラップを外して海苔を巻いたまま食べると、そのままカメラに向かって喋り始めた。
その時の彼女の顔は幸せそうに見える。
咲花はしばらく話すとそのまま食事を続けた。そこで一旦休憩する。その間に視聴者たちはコメント欄に感想を書き込む。●凄い! どうやって作ってるの? ●確かに、めっちゃうまそう。
咲花はスマホを取り出すと、動画サイトにアクセスした。
咲花は投稿されたばかりの新着動画を見た。
再生数は1000以下。
咲花のチャンネル登録者数は1万5千人だ。動画は3分弱の短いもので、タイトルは《あなたも出来る、簡単な自己紹介》とある。
そのサムネイルはどこかで見たことがある。
咲花はじっくりと眺めた。
それは自分が作ったものだ。
しかし、中身は全く違う。画面には自分と全く同じ姿の女性が映っている。声もそっくりだ。
服装まで一緒だ。
「あれ、ちょっと待って」
咲花は思わず口に出すと、慌てて浴室から出た。
「何でここに居るの」
彼女は咲花に尋ねる。しかし返事はない。代わりにスマホから女性の声が響く。
「……だってぇ、ここが一番安全だから」
「安全なの?」
「そうよぉ、もう何も心配ないわぁ」
「でも……」
咲花には心当たりがあった。「あなたは誰?」
「私はあなたの味方よぉ」
「どうしてここにいるの?」
「だってぇ、ここは私の家だもの」
「えっ、そうなの?」
「そうよぉ」
「そうなんだ……」
咲花はすっかり納得してしまった。彼女は自分の姿をしているけれど、どうにも胡散臭いと思ったが、そんなことを言って彼女を悲しませたくなかった。そもそも自分はそんなに器用じゃない、彼女は自分に嘘をつけないだろうかと考えた。
それに彼女はとても優しいし、自分を大事にしてくれるような気がしたからだ。
それからというモノ、咲花の仕事は順調だった。
彼女から教えてもらった通りにやると面白いほど稼げるのだ。
その方法は単純明快だった。まず、その日最初に投稿する内容を考える。その次に、そのネタでどんな話をするかを、その日に思いついた事として文章にする。そしてそのあと、動画を撮って編集する。それだけだった。
例えば今日なら、昨晩、家族で夕食を取った時の出来事だ。
その時に食べたのは、野菜を炒めたもので、それが美味しかったと咲花は話した。
しかし、それだけでは味気ないので、彼女はもっと詳しく料理について語った。
それを文字にしてまとめる。最後に、映像も交えて紹介する。その作業をすればする程、動画の再生回数が増えていく。もちろん、ただ紹介しただけで増え続ける訳ではない。しかし、どんなに時間がかかっても、毎日少しずつ増え続けた。
咲花は一心不乱に作業に取り組んだ。
咲花はその動画で生計を立てられるようになった。仕事の依頼が殺到している。しかも咲花が仕事をするのは決まって夜だ。つまり、その時間に多くのユーザーが見てくれる。咲花はそれを理解した上で、動画を投稿した。
「みなさんこんにちは。今夜は、最近話題になっているあの食べ物について解説したいと思います」
画面が切り替わると、そこには咲花が居た。
「まずはこちらの商品です」
「こちらはですね、コンビニのおにぎりなんですけど、具にチーズが入っているんですね」
「それで食べてみると、これがびっくりするほど美味しいんですよ」
「えー、信じられませんよね」
「本当ですよ」
「それじゃあ、試してみましょう」
そう言うと、咲花はラップを外して海苔を巻いたまま食べると、そのままカメラに向かって喋り始めた。
その時の彼女の顔は幸せそうに見える。
咲花はしばらく話すとそのまま食事を続けた。そこで一旦休憩する。その間に視聴者たちはコメント欄に感想を書き込む。●凄い! どうやって作ってるの? ●確かに、めっちゃうまそう。