「我が家臣が無礼を働きすまない、祓い屋様と守り手様。私の名前はミズチと申します」

ミズチと名乗った少女に僕はどうするか、と新城へ視線を向ける。

「十手を下せ」

手を伸ばして新城が僕の手に触れる。

「上級妖怪が相手かと思ったが、まさか本物の神がやってくるなんてな」
「ほう、我の力を見抜くとは、並の祓い屋ではないようですね。これは頼りになりそうです」

ニコリと微笑む彼女に僕達は毒気を抜かれたように警戒を解く。

「アンタに敵意がないことはわかった。その前にこの雨をなんとかしてくれないか?流石に一週間も続いていると気が滅入る」
「それは失礼した。久々の人間界だった故に力の加減を間違えていたようだ」

ぺこりと会釈すると共にさっきまで降り注いでいた雨が嘘のようにやんだ。
新城の言う通り、この雨は目の前のミズチという妖怪の力だった。

「では、祓い屋様、守り手様、そして、そこの女性の方も交えてお話よろしいですか?」
「あ?」
「え、三人?」
「あちらに、お一人」

不思議そうにミズチさんが指さす方をみる。

「…………ぁ」

瀬戸さんがヤバイという表情をして隠れた。

「お前、そこで何をしている?」

あ、ヤバイ、新城もキレている。

「えっとぉ、その、てへ」

ブチッと新城の頭の中の何かが千切れる音が聞こえたような、気がした。