馬車は整地されていない石ころで荒れている坂道を下っていく。

「きゃっ!」

 馬車の中でリーズの茶色く長い髪や肩が激しく揺れる。

(あまりのあぜ道でお尻が痛い……)

 馬車は何度も何度も横転しそうになりながら、ある辺境の地へとたどり着いた。

(どこかについた?)

 御者が馬車の扉を開き、降りるようにリーズに伝える。

(降りろ、と言うの? ここで?)

 周りはただの森で、四方どこを見ても家や街は見当たらない。
 リーズが地に足をつけた瞬間、御者は何も言わずにさっと席に乗るとそのまま馬車を操って去っていく。