「―――待って」
登校中、咲桜の姿を見つけて駆け寄ろうとしあたしの腕を、遙音くんが摑んだ。
「ふぇ? どうしたの?」
勢いを殺されて、驚いて振り返る。
遙音くんは何やら思い詰めた顔をしている。
「遙音くん?」
「笑満ちゃん、咲桜のこと……すき、なの?」
「うん、大すき」
「……じゃあ、俺のこと……は?」
「えっ」
あたしが面食らった顔をしたからか、遙音くんはどこか痛そうに瞳を細めた。
「それは、その――
「ごめん、行っていいよ」
するりと摑んでいた手が解けた。
あたしが遙音くんを見上げたままでいると、遙音くんはうつむき気味に「咲桜、行っちゃうよ」と細く言って先に歩き出した。
「――――………」
遙音くん? どうして、そんな顔するの?
再会して、遙音くんの色んな表情を見て来た。
でも……そんな哀しそうな顔は、知らないよ……?