大輝のことを好きだと自覚した夜から、なんだかいつもの調子が出ない。

 例えばこうだ。

 バンドスコアを数人で覗き込んでいる時、隣に大輝が来ると私だけ酸素濃度が薄くなる。
 目線はスコアに向けているのに、意識が全部大輝に向かってしまう。

「このギターの部分、キーボードでサポートできない?」
「うーん。出来るっちゃ出来るけど、音的にギターの方が良いと思う」
「そっか。じゃあ、もう少し弾きこんでみるよ」

 難しいフレーズ部分を纏めるために集まって話し合っているのに、私は何も考えていない。

 視線をチラリと横に向けると、真剣な顔をしている大輝が目に入った。
 少しだけ触れてる制服の袖がチリチリと音をたてている気がする。
 このままだと燃えてしまうかもしれない。

 そんなあり得ないことを考えて、私はスっとその輪から離れた。

 それからこれも。

 私がボイストレーニングをしている時、少し離れた場所で、大輝がギターを鳴らしていた。それを見つけた途端、勝手に視界がクローズアップされる。
 器用に弦を弾いていく、細いけどゴツゴツした指が綺麗だと見惚れた。
 視線に気がついて顔を上げた大輝と目が合うと、キュウ……と音を立てて胸が萎む。

「ねぇ、集中して。音が半音下がってるよ」
「すみません」

 先輩に叱られて大輝の指から、自分のすべきことに慌てて意識を向ける。