その日を境に、大輝はただの部活仲間から気になる人に昇格していった。
急に『好きな人いるの?』だなんて聞かれたら、そうなるのは必然的。
大輝のことを目で追うことが明らかに増えた。それから、傍にいるとなんだかドキドキする。大輝が使っている香水の匂いに敏感になって、その匂いがするたびに体温がほんの少し上昇する。
ただの部活仲間だったはずなのに、大輝の声とギターの音だけ私の耳にクリアに聞こえるようになっている。
「あいみちゃん。それは、恋ですね」
「金山は、すぐ揶揄うよね」
学食でカレーうどんを啜りながら、クラスメイトが言う。男女比率が極端なせいで、学校で一番仲がいい友達は男の子だった。
「認めちゃえよ。そうすれば色々と楽じゃね?」
「うーん」
「あいつ、いい奴じゃん。俺、お似合いだと思うぜ」
大輝とも仲が良かった金山はそう言うと、カレーうどんをぺろりと平らげて食後のデザートを食べ始める。
「大輝も大藤のこと気になってるのかもよ。そうじゃなきゃ聞かないよ」
「それはないと思うけど」
カレーうどんに沈んだ豚肉を救い出しながら、美味しそうにプリンを食べる金山すっきりしない気分で見ていた。