「そういう大輝くんはどうなの?」
「俺はいないよ」
大輝は即答でそう言うと、それきり何も言わなくなった。
スタジオに変貌した教室に、最後の機材であるギターアンプを置いてホッと息を吐く。
「アンプを運ぶと制服が汚れるのが嫌」
重いアンプが擦れたせいで少し汚れた制服をパタパタとはたく。その私のボヤきがまるで聞こえていないかのように、大輝は関係ないことを言う。
「かっこいい先輩が多いし、好きな人できたら教えろよ」
「え?」
そんなこと言われる理由がわからない。聞き返そうとした私の声は、準備を終えた先輩が出した低いベースの音に掻き消された。
「一年、モタモタすんなよ。パートごとに別れて練習始めて」
先輩の声に同じパートごとに集まる場所へと歩き出す。
どうして私が好きになった人を教えないといけないのだろう。
少し前を歩く大輝の背中を見ながら、ぼんやりとそんなことを思っていた。
「俺はいないよ」
大輝は即答でそう言うと、それきり何も言わなくなった。
スタジオに変貌した教室に、最後の機材であるギターアンプを置いてホッと息を吐く。
「アンプを運ぶと制服が汚れるのが嫌」
重いアンプが擦れたせいで少し汚れた制服をパタパタとはたく。その私のボヤきがまるで聞こえていないかのように、大輝は関係ないことを言う。
「かっこいい先輩が多いし、好きな人できたら教えろよ」
「え?」
そんなこと言われる理由がわからない。聞き返そうとした私の声は、準備を終えた先輩が出した低いベースの音に掻き消された。
「一年、モタモタすんなよ。パートごとに別れて練習始めて」
先輩の声に同じパートごとに集まる場所へと歩き出す。
どうして私が好きになった人を教えないといけないのだろう。
少し前を歩く大輝の背中を見ながら、ぼんやりとそんなことを思っていた。