夏の夜空に打ち上げ花火がポンと咲く。
 その音に紛れるように、呆れた声が浜辺に響いた。
 
「いやいやいや、返事を聞きなさいよ。何やってんだよ」
「無理だったんだもん」
「聞かないでどうするんだよ。それが一番気まずいだろ」
「わかってるよ」

 うんざりした顔をした金山は、私を責めた。
 持っている手持ち花火が消える前に、次の花火に火をつける。

 金山の言う通りなのはわかっている。

 ただ一方的に気持ちを伝えただけで、ダメともイイとも言われていない。
 宙ぶらりんな状態だ。これが一番気まずい。

「じゃあ、しっかり聞いて来いよ。今」
「今!」
「大輝、花火までいるって言って、まだいるじゃん。終わったら本当に帰っちゃうぞ」
「でも……」
「あぁ、めんどくせぇな。……おーい、大輝ー!」

 痺れを切らした金山が勝手に大輝を呼ぶ。

「呼ばなくていいってば!」
「よくない。しっかり話しろよ。じゃ、俺はあっち行くから」

 きっぱりと金山はそう言って、呼ばれて近づく大輝と一言二言会話をする。最後に金山は親指で私を示した後、打ち上げ花火をやっている集団に混じっていった。

「お疲れ」

 すでに火が消えた手持ち花火を持ったまま、しゃがみこんでいる私に向かって、大輝はそう声をかけた。