まただ。
 人の気も知らないで。

 どうして何度も聞いてくるんだろう。
 あと何回聞かれるんだ。

 なんだか少し、イライラしてきた。

 そんなに聞きたいなら教えてあげようか。
 それで、もう、こんなやり取りもなくなる。

「……私の好きな人は……」

 たっぷり間を開けて声を出す。
 一気に言おうと思ったのに、途中で言葉が引っ込んでしまった。
 私は何をしようとしているのだろう。告白なんてする予定じゃなかった。

「お! 教えてくれるの?」
「わ、私の好きな人は……」

 意外、と言いたそうな顔で大輝が私の方を見る。
 視線がバチンとぶつかって、慌てて顔を前に向けた。沖にいる人たちが、ゆっくりと岸に向かってくるのが見える。
 握ったままのアイスが、じんわりと手の中で溶けていく。

「好きな、人は……」
「ははは、いいよ。無理して言わなくても」

 何度も同じことを繰り返す私を、大輝が笑う。

「あのね」
「うん」

 引いては返す波の音が、一瞬だけ無音になったその時。

「……私の好きな人は、大輝くんなの」


 こうして私は、生まれて初めての告白をしたのだ。