夕暮れ時の海は、少し寂しげだ。

 騒々しかった浜辺がゆっくりと静かになるのを感じながら、私は一人で砂浜に座っていた。
 視線の先には、レンタルゴムボートで沖の方まで行った人たちが見える。彼らが帰ってきたら、着替えて宿泊先に行く。
 日帰り組は、ここで解散だ。

 線香花火のような色をした太陽が、ゆっくりと海に沈もうとしていた。

 と、ふいに頬に冷たい物が触れる。

「冷た! 何!?」

 咄嗟に手で振り払う私を、誰かが笑っている。

「ははは。これ、やるよ」

 ポッキンアイスを持った大輝が隣に座る。アイスをパキリと割って、半分を私に差し出した。

「ありがとう」
「楽しかったけど、疲れたな―」

 少し濡れた頬を拭いながらそれを受け取る。すぐに食べる気になれなくて、両手で握りしめて前を向いた。

 もし、告白をするのであれば、タイミングは今なのかもしれない。
 今なら周りに人もいないし、他の友達は沖の方で大きな笑い声を上げている。さっき金山に言われたことを、私はどうやら気にしているらしい。
 気まずさと恥ずかしさを紛らわせようと、素足を砂浜に埋めていく。

「なぁ、大藤」

 しばらくの無言の後、大輝が前を向いたまま声を出した。

「何?」
「好きな人、できた?」