目的地に無事に到着した私たちは、水着に着替えて海へと繰り出す。

 海しかない、という表現は決して大袈裟ではかった。それでも、高校生の私たちにはそれだけで本当に充分だった。

 昼ご飯を食べることも忘れて遊び疲れた私は、一人ビーチにある海の家でラムネを買った。
 ガタガタするテーブルにラムネを置いて、背もたれのない丸椅子に座る。それから、ポンッと栓を開けた。
 銀のタライに大きな氷と一緒に冷やされたそれは、暑い日差しの中で遊んでいた私の体にゆっくりと染み込んでいく。

「はぁ……」
「良い飲みっぷり。お疲れ」

 一気に半分飲んで一息ついていると、金山が目の前の席に座った。

「……夏なのに、おでん?」

 金山の前に置かれたおでんを見て、思わず眉をひそめた。

「海の家って言ったらおでんだろ」
「嘘だぁ。焼きそばとかじゃないの?」
「いーや。おでんだね」

 おでんは冬の食べ物だと思う。真夏の海の家で、湯気がもくもくとしているおでんを食べる金山の気が知れない。
 信じられないという気持ちを視線に込めて見るが、金山はそんなこと気にすることなく大根を一口齧った。

「うん、うまい。これだよ、これ」
「信じらんない」
「そんなに見つめるなよ。相手が違うだろ」

 金山はそう言って、箸でビーチの方を示した。