最後に海に行ったのはいつだろう。
 どちらかといえば……、いや、どちらかと言わなくても引きこもり気質な私は、夏休みに海に行くという概念がなかった。
 多分、小学生のころに家族で行ったのが最後になっている気がする。

「海かぁ。夏って感じ」
「だろ? 大輝も誘ってさ。親父の会社の保養所があるから、そこにみんなで泊まろうぜ」
「泊まりなの!?」

 金山の提案に思わず大きな声が出る。
 周囲にいた人の視線を背中に感じながら、誤魔化すようにカレーうどんを食べる。

「泊まりが良くね? 夜は花火とバーベキューだな」

 プラスチックで出来たスプーンを咥えた金山がニッと笑った。

「軽音の奴ら、俺、仲良いし、適当に声かけとくわ」

 金山はそう言うと、空になったプリンのカップをゴミ箱に投げ捨てる。

「泊まり、かぁ……」
「高校生活初めての夏休み。一泊二日の海。……告白する、チャンスかもよ」
「告白だなんて、そんな、しないよ……」

 ようやくカレーうどんを食べ終えて、ごちそうさまでした、と両手を合わせる。

「ついに大藤も彼氏持ちになるのかぁ。俺は寂しいよ」

 やっぱり茶化すように金山はそう言って、私の肩を軽く小突いた。